その脇で、警視庁捜査一課の新人・朝生が、先輩の毒島に報告していた。
「飛び降りです。F商業ビル屋上から。即死」
「身元は大野正之、58歳。所持品から確認」
「着衣はブラウンのジャケット、黒スラックス」
「一階のアパレル店スタッフが目撃。清掃中、上から落ちてきたと」
一拍置いて、朝生は続けた。
「現時点では自殺と見るのが自然です」
毒島は煙草を噛み、火を揺らした。
「持ち物は?」
黒い証拠袋を開く音がする。
「財布。現金二万一千五十円。免許証。レシート数枚」
「煙草とライター」
「それと封筒が一通」
毒島の目が細くなる。
「遺書か?」
「違います」
朝生は封筒をつまみ上げた。
「宝くじです。一枚」
「……宝くじだと?」
毒島は煙を吐き、視線を上げた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
二日後、午後九時。
東京、JR高架下の屋台。
毒島と朝生は並んで座り、おでんをつついていた。
客は二人だけ。電車が通るたび、店全体がわずかに揺れた。
「まだ引っかかってるのか」
毒島がビールを空ける。
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