「ねえ、私、きれい?」
薄暗い夜の通学路。街灯の下で、トレンチコートを着た女が立ちはだかった。
白いマスクの奥から、鋭い視線が僕を見下ろす。
普通、恐怖で腰を抜かすシチュエーション。
でも、電動車椅子のコントローラーを握る高校生・ウジンは、
満面の笑みで身を乗り出した。
「うわ、マジ!?本物の口裂け女じゃん! 最高、今日のブログのネタ決まり!」
口裂け女は一瞬、拍子抜けしたように目を見開いた。
しかし、すぐに怪しく目を細め、ゆっくりとマスクを外す。
その口は、耳元まで引き裂かれ、鋭い牙が覗いていた。
「これでも・・・・・・きれいって言える・・・・・・?」
「すっげえ!! 骨格と大頬骨筋の可動域どうなってんのそれ!? 解剖学の常識を超えてる! 遺伝子変異? それとも特殊な外科手術? 術式教えてよ!」
ウジンは怯えるどころか、目を輝かせて車椅子を近づけた。
スマホを取り出し、 写真を撮る。
「な、何なのあんた・・・・・・。怖くないの・・・・・・!?」
思わず一歩引く口裂け女に、ウジンは屈託のない陽キャスマイルを向ける。
「いや、だって怪異とか都市伝説って、現代科学への挑戦状でしょ?
あ、そうだ。口裂け女の弱点といえば『ポマード』だよね。
あれって要するに、整髪料に含まれるシトラス系の香料や、
特定の化学物質に対する急性のアレルギー反応、
あるいは精神的トラウマによるパニック障害の一種だと思うんだ。ちょっと試していい?」
ウジンはリュックから、科学部で自作した謎のスプレー缶を取り出した。
「これ、ポマードの成分を分析して、有効成分だけを凝縮した超高濃度微粒子ミスト!
いっきまーす!」























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。