「ハト女って知ってるか?」
ある日、友人との飲みの最中そんな話を切り出された。
夜道を歩いていると遭遇することがあるらしく、枝のように細い手足をしており、冷える日でも素足に肌着しか身に纏っておらず、なにより異様に離れた両目と常に窄めた口が不気味な顔をしており、その顔がどことなくハトっぽいから“ハト女”の名前の由来にもなっている。
そんな不気味な容姿ではあるものの危害を加えてくるような事は無く、出会ってもただこちらを見つめてくるだけなのだそう。
交通事故で顔面がめちゃくちゃになった末に精神がおかしくなり、夜な夜な病院を抜け出して犯人を探しているとか……まあ、ようはローカル都市伝説のようなものだ。
そんな話を聞いた帰り道、その“ハト女”に出会ってしまった。
電柱に付いた街灯に照らされたその姿は話に聞いた通り薄着で手足が細く、離れた両目をこれでもかと見開きこちらを見つめている。
初めは酒に酔って幻覚でも見ていたのかと思ったが、姿がはっきりと確認できるほどに酔いと一緒に血の気も引いていくのを感じた。
しかし家に辿り着くにはその路地を通るほか無く、友人の話でも特に害を与えてくるわけではないようなので、なるべく距離を取って通り抜けることにした。
足早に、“ハト女”と決して目を合わせないようにすれ違おうとしたその時
「ほろっほぅ」
“ハト女”の窄めた小さな口からそんな声が聞こえた。
思わず声の方向へ視線を向けると
「ほろっほぅ ほろっほぅ ほろっほぅ」
“ハト女”がこちらを指差しながらずっとそう続けていた。それこそハトのような声で、淡々と。
恐怖のあまり思わず駆け出し、その路地を走り抜けなんとか無事に帰宅することができた。
後日、友人に“ハト女”と遭遇した事を伝え、『鳴き声までハトみたいなんだな』と言うと
「え?鳴き声なんて話聞いた事ないけど」と返ってきた。
それを聞いてふと、あの夜のことを思い返すと
“ハト女”の「ほろっほぅ」という声は鳴いていたわけでは無く
俺を指差して「この人」と言っていたのではないか

























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