【short_97】ハヤ捕りランプ
投稿者:kana (210)
小学校の夏休みに訪れた田舎で、毎日自然に接し、自由気ままに過ごしていた。
今日は近くを流れる川で何か捕まえようと網とバケツを持って出かけることにした。
その前に、二階で寝ている爺ちゃんにも声をかけた。
「爺ちゃんオレ川で遊んでくるわ、爺ちゃんもはよ元気になれよ!」
爺ちゃんは寝たまま顔をこっちに向け、少し笑っているようだった。
「気ぃつけて行くんだよ」婆ちゃんの声がする。
「わかってるよ~~」走って河原へ向かう。
「ザリガニでもいねーかなぁ~」そう言いながら石をひっくり返したり、草が生い茂っている川面の下あたりを網で掬って見たり、いろいろしてみるが手ごたえが今一つだ。
「おまえ、へたっぴだなぁ」そう言って地元の子供が声をかけて来た。
「おまえにいいもん見せてやるよ」
そう言って、イガグリ頭の少年は金魚鉢のようなガラス瓶を見せてくれた。
「いいか、見てろよ」少年はそう言ってその平べったい金魚鉢を川の流れの中に沈めた。
背負っていた袋から、なんと味噌を出してきて、その金魚鉢の口のフチに塗りたくった。
少し離れて見ていると、そのガラス瓶の中にどんどん小魚が入っていく。
「うわ~、味噌に釣られて小魚がどんどん集まってくるよ」
「だろ?あの中に入ったハヤは、なぜか出口がわからなくなって外に出られないのさ」
「へぇ~」 ボクらはそれから一緒に川遊びをした。
少年が器用にサワガニの捕り方も教えてくれた。
・・・やがて時が過ぎる。
「ハヤとサワガニ、持って帰って婆ちゃんに料理してもらえよ」
「えっ、うん・・・わかった・・・ねぇ、また明日遊ぼうよ」
「あぁ、またな!」そう言って少年はガラス瓶を持って帰って行った。
ボクのバケツの中は今日の収穫でいっぱいだ。
「婆ちゃん! 帰ったよ~~大漁だよ~~!!」
「あらま、いっぱい獲れたねぇ~」
「爺ちゃーん大漁だよ~」ボクは階段を駆けあがり、寝ている爺ちゃんの側に駆け寄った。
「あれ??」
・・・爺ちゃんの枕元には、金魚鉢によく似た、あのガラス瓶が置いてあった。
(・_・?)
爺ちゃんと遊んでいたのですね…。
気が付いてしまったら…もう…その少年とは遊べないのかも…。
寝たきりのおじいちゃんも、ホントは孫と遊びたくて、生霊飛ばして子供に戻って一緒に遊んだんだね。