石段の悪霊
投稿者:件の首 (54)
高校の近くにある神社の階段で、悪霊が出るという噂がある。
この階段は、真っ直ぐ30メートル程のぼる急なもので、踊り場もない。そのせいで昨年、中学生が1人、転落事故で死亡している。
階段は修理され手すりも設置されたのだが、しばしば彼女の霊が現れ、肩を引っ張ったり足元をすくったり、転落しそうになった学生は多数存在していた。
その日、私はオカルト好きのA子に連れられ、検証のために階段を登る事になったていた。
気が進まなかったが、自分が悪霊を怖がっていると受け入れるのも嫌だった。
「いこっか」
A子は胸元に固定したスマホで動画を撮影しつつ階段を登る。
「……結構大変だなぁ」
「そうだねA子。これなら足も滑らせるよね」
私もその後から、手すりにしっかり掴まりながら進む。
だが、一歩進む毎に、足が重くなっていった。
「ねえ」
私はA子の背中に声をかける。
「やっぱり、やめない? なんか嫌な感じ――」
その時、振り向いたA子の顔は、全く別人だった。私の前まですっと近寄ると、にっこりと微笑んだ。
次の瞬間。
A子は、とん、と私の肩を押した。
精神分析医によれば、A子は子供特有の思い込みの強さからの自己暗示、いわゆる悪霊憑きの状態になったのであろう、との事で、罪は問われない可能性が高い。
でも、一命は取り留めた私には分かっている。A子は本当に悪霊に取り憑かれた事を。
どうか、成仏して下さい。
ただ、受験が気がかりで、同じ高校を受けているあなたが減れば、なんて。
人に強要されて、それで!
本当です、去年のあの日あなたを本気で押した訳じゃ、なかったんです。
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