「Aさん郵便物、返って来てますよ」
役場に届いた郵便物を同僚が、デスクに配る。
確かに僕が出した簡易書留だ。
「訪問行かないの? 電話も通じなかったんでしょ?」
「……ケアマネでも付いてりゃなぁ」
「滅多な事言わないで下さい。ケアマネ事務所を市営で作らされますよ」
公用車でAさんの住む町営住宅にやって来た。
金のかかった作りだが古ぼけていて、Aさん以外の住人はもう2人しかいない。
階段を上がり、Aさんの部屋の前に来る。息切れがする。40を過ぎてから、一層太って来た。
ノックして声をかけるが、返事はない。
ダメ元でドアノブを回す。
開いた。
「Aさーん、いらっしゃいますか!」
室内に入る。
また何かを腐らせている。
真夏でも「寒い寒い」と言って換気もしないから、空気から腐るんだ。
奥さんがもしもここに残っていたら、2ヶ月保たなかったろう。
奥の寝室の引き戸を開けた。
寝室のベッドの上に横たわっていたのは、腐敗して真っ黒のAさんの死体だった。
瞬間。
僕は頭を激しく殴られ昏倒した。
意識がようやく戻った時、僕は動けなかった。
思ったように身体が動かない。
叫ぼうにも口が動かない。
考えがまとまらない。
目の前を何かが飛ぶ。
ハエだ。
ハエだらけだ。
まだAさんの部屋の中だ。
痛い。
頭が。
いや、身体が痛い。
全体的に痛みがある。
なんだこれ。
痛がゆい?
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