呪殺
投稿者:件の首 (54)
「Aさん郵便物、返って来てますよ」
役場に届いた郵便物を同僚が、デスクに配る。
確かに僕が出した簡易書留だ。
「訪問行かないの? 電話も通じなかったんでしょ?」
「……ケアマネでも付いてりゃなぁ」
「滅多な事言わないで下さい。ケアマネ事務所を市営で作らされますよ」
公用車でAさんの住む町営住宅にやって来た。
金のかかった作りだが古ぼけていて、Aさん以外の住人はもう2人しかいない。
階段を上がり、Aさんの部屋の前に来る。息切れがする。40を過ぎてから、一層太って来た。
ノックして声をかけるが、返事はない。
ダメ元でドアノブを回す。
開いた。
「Aさーん、いらっしゃいますか!」
室内に入る。
また何かを腐らせている。
真夏でも「寒い寒い」と言って換気もしないから、空気から腐るんだ。
奥さんがもしもここに残っていたら、2ヶ月保たなかったろう。
奥の寝室の引き戸を開けた。
寝室のベッドの上に横たわっていたのは、腐敗して真っ黒のAさんの死体だった。
瞬間。
僕は頭を激しく殴られ昏倒した。
意識がようやく戻った時、僕は動けなかった。
思ったように身体が動かない。
叫ぼうにも口が動かない。
考えがまとまらない。
目の前を何かが飛ぶ。
ハエだ。
ハエだらけだ。
まだAさんの部屋の中だ。
痛い。
頭が。
いや、身体が痛い。
全体的に痛みがある。
なんだこれ。
痛がゆい?
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