20年ぶりに冬に里帰りをした私は、久々に車でその湖にやって来た。
当時、こんなに車道に雪がなかった気がする。自然の湖でスケートが出来たのだから、思い込みでもない筈だ。
森が終わると、雪にすっかり覆われた湖が広がっていた。
私は、湖の畔で自動車を停めた。
筈だった。
みしり、と音がしたかと思うと、車が傾いた。
エンジンをかけ、バックしようとする。
だが、アクセルを踏んでも手応えがない。
車は後部座席側を下に、垂直になっていく。
沈んでいる。
雪に覆われた氷が割れたのだ。
こんなところまで水が来ていたのか。
後部座席の窓の外はもう水中だ。
運転席のドアを開けようとする。
開かない。
大きな音がして、後部座席の窓ガラスが割れ、水が流れ込み始めた。
一層早く車が沈み始める。
ドアが開かない。
そうだ、割れて水圧の差がなくなれば開く。
息を思い切り吸い込んで、ドアの窓を蹴り破った。
同時に水が一気に車内に流れ込む。
ドアレバーに手をかけると、あっさり開いた。
車外に飛び出す。
水の温度は氷とほとんど変わらない。身体が縮こまっていく。
上に泳ごうとするが、方向感覚が一瞬分からない。
頭が湖底に向いているのに気づき、何とか頭を湖面方向に向ける。
雪もそれほど厚くはないのだろう。上全体に明るさがある。
上へ泳ぐ。
泳ぐ。
服がまとわりついて重たい。
泳ぎつつ服を脱ぐ。
どんどん体温が奪われていく。
呼吸が限界になっていく。
光が、ようやく近付いて来た。
近付いて、さらに寄って、そして。
固いものに触れた。
氷だ。
氷に覆われている。
光がより強い場所が見えた。
落ちた割れ目だ。
全力で泳ぐ。
光が強くなっていく。
そうだ。
もうひとかき。
指先が水から出る直前。
ご冥福をお祈りします。
絶対誰かやったやろ