合わせ鏡の悪魔
投稿者:件の首 (54)
オカルトマニアの友人Kから教わったのが、丑三つ時に合わせ鏡をすると、中に1人、悪魔が紛れ混んでいる、という儀式だった。
スマホのアラームが小さく2つ鳴って止まる。
午前2時、いわゆる丑三つ時の合図だ。
ぼんやりしていた私は鏡を見る。
全身の映るよく磨かれた2枚の鏡。身長ほどの高さはないが、椅子に座れば全身が入る。
悪魔は基本、右から数えて素数番目に忍び込む。2番目以外は全て奇数なので、右側を主に探す事になる。
2番目にはいない、右側の奥の奥の奥の……私の姿が続く中に、1枚だけ、動きが遅れるものがあった。
まず正体を見破る事。
「あなた、悪魔ですね」
瞬間、私の姿の擬態が歪み始める。
これだけで、半分を縛る事が出来る。
「魂を対価に交渉をしましょう」
ここで、悪魔の名前を要求する。
半分縛られた悪魔は、これを断れず、名前まで縛られれば悪魔は完全に私の支配下、使い魔になる。そうなれば、魂の契約はチャラだ。
悪魔は耳をこちらに向け、何か言っているが、小声でほとんど聞こえない。
「聞こえる!?」
ぐぅっと近付いてみる。
と。
悪魔がふっと消えた。
他の鏡に移った?
そう思って何となく振り返った時。
左側、2枚目の鏡に等身大の悪魔がいた。
押された感触と共に、身を乗り出していた私はバランスを崩し、鏡の中に転がり落ちる。
「ああ、長かった」
悪魔の声がはっきりと聞こえる。
やられた小声は作戦だった!
「悪いわね、あなた。次を見つけてね」
こちらの鏡を叩くが、びくともしない。
「それとあなた、私を悪魔と言ったけど、それは勘違いよ」
こちらの鏡には何も映らなくなった。
多分、合わせ鏡をずらしたのだ。
悪魔ではない?
暗闇の中で、Kの顔が浮かぶ。
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