ただ、玄関前の雨で濡れた地面に、不自然な蹄の跡が残っていた。
道路から玄関まで。
そして玄関の前で、ぴたりと止まっている。
それから数週間。
雨が降るたびに、同じ夢を見るようになった。
必ず競馬場。
必ず雨。
必ずあの騎手。
そして毎回、少しずつ僕との距離が近くなる。
最初は馬場の向こう。
次はスタンドの下。
その次は観客席。
そしてある夜。
騎手は僕のすぐ目の前に立っていた。
折れた首をぶら下げたまま、僕を見ている。
そこから先は覚えていない。
目覚めた時、
嫌な予感がして、その日は会社を休んだ。
一日中、家から出なかった。
午後。
激しい雨が降り始めた。
窓を打つ雨音を聞きながら、僕はテレビを見ていた。
するとニュース速報が流れた。
「○○競馬場、大雨のため開催中止」
その瞬間。
玄関から音がした。
コン、コン。
誰かがドアを叩いている。
僕は動けなかった。
もう一度。
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