コン、コン。
そして、ドアの向こうから馬蹄の音。
パカッ……パカッ……
僕は必死に耳を塞いだ。
五分ほど経った頃だろうか。
抑えていた両手を耳から離すと、
激しい雨音とともに、その気配は掻き消されていた。
次の日の朝。
玄関の外に、泥が落ちていた。
泥の跡は、蹄の形をしていた。
道路から玄関へ向かって、一頭分だけ。
その先には、もう一つ。
人間の靴跡があった。
騎手が降りたのだろう。
靴跡は玄関の前で止まっている。
僕はあまりにも怖くなってしまい、
今日も家から出られなくなっていた。
ーーーーーーーーーー
その日の夕方頃、
玄関のインターホンが鳴った。
「ピンポーン」
昨日の玄関での出来事が蘇る。
僕が固まっていると、再び。
「ピンポーン」
そして、三度目の後に、聞き覚えのない明るい声がした。
「すみませーん、〇〇ですけどー!」
僕は恐る恐るモニターを見る。
そこに映っていたのは、年配の男だった。
麦わら帽子に、競馬新聞を小脇に抱えている。
どこか呑気な顔。
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