「無理じゃないよ。」
久しぶりに会ったMに何を話したらいいのかと考えた。
「そうだ、なんで〇〇高校を選んだの?××学園に行くんじゃなかった?」
「××学園に見学にも行ってみたけど、あんなお嬢様学校は堅苦しいっていうか、なんだか自分には合わないみたいだし。」
Mはそう言うと、軽く鼻をすすった。
Mが鼻をすする時は、何か嘘をついた時だ。その癖は子供のころから変わってない。
ただ、その時は何が嘘なのかはわからなかった。
「これ覚えてる?」
Mは制服のポケットから1枚のハンカチを取り出して僕に渡してきた。
「これって…確か…。」
「そう、小学3年生の誕生日にプレゼントでもらったやつよ」
ハンカチは一面がピンクで、隅には当時流行っていた妖怪をあしらったキャラクターがプリントされている。
その隣には当時自分で書いたであろう、色あせた「M」と名前が入っていた。
そして、その上には真新しいしっかりとした文字で「ありがとう」と書かれていた。
僕はハンカチをしっかり見ようとして、広げてMから視線を外した。
ハンカチ越しに、自分の足元にははっきりとした影が見えた。
さっきまで曇っていたはずの空を見上げると、流れる雲の隙間から太陽が覗いて、日差しがいつもより強く眩しく感じられた。
視線をMに戻すと、Mも僕を見つめていた。
しかし、その様子が変だった。
Mの体が透けている。
何かの見間違いかと思ったが、Mの足元を見ると、そこには影が無かった。
(何だ…これは?)
もう一度Mの顔を見ると、さっきよりも透けている。
透き通るような透明の肌という表現があるが、実際にMの体は透けていて、向こうの景色が見えるほどだ。
「…もう戻らないと…」
Mが消えそうな声でつぶやいた。
思えば、こうやってMと見つめあって話をしたのは何年ぶりだろう?
そんなことを思ってMを見ると、いつの間にかMの目からは大きな雫がこぼれていた。
雫はまるで蒸発するように空中へと消えていったが、雫はあふれては消え、またあふれては消えている。
Mはまだ何か言いたそうだったが、消えていく体に比例して声さえも消えかかっていた。



























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