小学校の先生をしているKから聞いた話。
その小学校では、20年ほど前にプールの排水口にN君という児童が吸い込まれて亡くなるという事故があった。
プールは老朽化が進み、設計も古くて安全性に問題があるとされ、その夏はそれでプールの授業は中止になった。
N君の親は、せめて最後に身に着けていたプールキャップを遺品として受け取りたいと希望していたが、排水の勢いのせいなのか、パニックになり自分で脱いだのか、排水口に流れてしまったらしくて結局見つかることはなかったという。
その後、プールは最新の設備を備えて建て替えられた。
その運用も年々アップデートされ、教員不足も手伝ってか、最近は児童が溺れるのを防止するセンサーを使うようになった。
そのセンサーというのは、ある企業と共同開発されたもので、児童一人一人のプールキャップのつむじのあたりにある小さなポケットの中に備わり、先生が持っているタブレット端末へ信号を発信するという仕組みだ。
センサーは児童のいたずらやトラブルなどを防止するため、学校にある特殊な器具を使わないと取り外せないようになっている。
プールキャップは派手な蛍光ピンク色で、顎まであるベルトのマジックテープで固定されているが、いざというときにはすぐに自分ですぐに外せるという造りだ。
ある一定の時間以上に水に漬かっている児童が一人でもいれば、タブレット端末の画面が緊急の画面に切り替わり、警告音が鳴るようになっている。
警告音が鳴ったら、一度児童全員ををプールサイドへ上げて先生が人数を確認するという手順だ。
ただ、一つ問題があるとすれば、このシステムはまだ試作品のような物で、一人一人の名前が登録されているわけではなく、その人数しか把握できないという事だ。
だから、その時間を超えて水に漬かっている児童がいても、それが誰なのかすぐにはわからない。
ある日のプールの授業中の出来事だ。
この日は、特に泳ぐようなことは無く、自由に水遊びをするような内容だった。
そうなると、児童の間で誰が一番長く潜れるかという競争が自然に始まってしまう。
もちろん、一緒にプールに入っている先生たちがいつもより注意深く観察しているのだが、こんな時こそ例のセンサーが活躍してくれるわけだ。
ところが、いつもなら一定の時間を過ぎて潜っているような児童はいないのだが、この日は初めてタブレットの警告音が鳴った。
先生達はひとまず児童をプールサイドへ上がるよう誘導したが、児童の全員がキャップを被っていて、脱げた児童はいなかった。
先生は児童の人数を数えて全員いることを確認したから、見た目ではもう誰も潜っていない。
しかし、タブレット上ではまだ誰か一人潜っていると表示され、警告音が鳴り続けていた。
人数の数え間違いかもしれないから、念のため先生達がプールの中を見て回ったが、誰の姿も無かった。
いつの間にかタブレットの警報音は止まっていた。
結局、センサーの誤作動だろうという結論になった。
見回りが終わって最後にプールから上がってきた先生が、手に何かを持っていた。
それは、「N」と名前が書かれた古い黄色のプールキャップだった。






















まずまず、Nくんがいる時にこのシステムがあったのか。
ぞワット来るぐらい怖い話でした。😱
ふつーに怖かった……..