毒島は視線だけを向けた。
「知らん」
「都市伝説です」
「人が一度に受け取れる幸福には上限がある。その上限を超えると現れる」
「お多福面の女が」
「それを見た人間は、死にたくなる」
毒島は鼻で笑った。
「くだらん話だ」
その瞬間、携帯が鳴る。
毒島は通話を終え、立ち上がる。
「悪いな。病院だ」
「おめでとうございます」
朝生はジョッキを軽く上げた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
病院。
毒島は裏口から入り、廊下を抜け、個室に入る。
「愛弓、おめでとう」
娘は弱く笑った。
「義彦くんは?」
「上場準備で会社よ」
毒島は肩をすくめる。
「忙しい男だ」
娘は小さく言う。
「幸せすぎると、怖くなるね」
毒島は煙のない空気を吐くように笑った。
「気のせいだ」
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