「義彦くんは?」
「上場準備で会社よ」
毒島は肩をすくめる。
「忙しい男だ」
娘は小さく言う。
「幸せすぎると、怖くなるね」
毒島は煙のない空気を吐くように笑った。
「気のせいだ」
だがその言葉は、自分にも届いていなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌朝。
警視庁捜査一課。
朝生はモニターに向かっていた。
「例の映像です」
画面は粒子が荒く薄いブルーの靄に覆われており、どこか不穏な空気感を醸し出している。
再生された映像には、屋上のゲーム施設とベンチに座る男の姿。
やがて何処から現れたのか、画面右からひょっこりと“女”が現れる。
割烹着のような服装。
まるで空中数センチを滑るかのような不自然な移動。
顔はまるで白粉を塗ったように異様に白い。
それは一度大野の前で立ち止まり、再びすぐに通り過ぎる。
その直後だった。
大野の表情が一変する。
薬物患者のような焦点の合わない瞳。
陶酔にも似た異様な笑み。
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