うちの家の近くには広い畑があります。
夏はスイカやトマト、トウモロコシなどの野菜をたくさん作り、近くのスーパーで販売しています。
少し値段が安く、無農薬なので、近所の人はこぞってそこの野菜を買っている人気の野菜です。
農家の人が数人で畑を耕し、毎日来て水をくれたり、雑草を抜いたりしていました。
そんな畑も冬になると人がほとんど来ない場所になってしまいます。
誰もいない畑はひっそりとしていて、昼間でもちょっと近寄りがたい場所になってしまうのです。
冬は日が短いので、夕方になると日も陰り、あたり一面が日陰になったように、暗くなってしまいます。
鳥すら夕方になると来ないその場所。
陰気くさい感じがして、気持ち悪いなと感じてしまうのです。
近所の人もカーテンを閉めて、その場所が見えないようにしていました。
そんなある日。
ふとカーテンを開けて見ると、ここら辺では見たこともないおじさんが畑に立っていました。
「誰だろう」と見ていると、座ったり、立ったりしだします。
なにやらポケットから食べ物を取り出し、食べだしました。
「冬の寒いときに畑で食べるだなんて、おかしな人だな」と思って見ていました。
それに、格好がおかしいのです。
コートを脱ぐと、ランニングシャツとトランクス姿。
服は着ていないは、いきなり下着になるなんて、頭のおかしい人にしか見えません。
そのおじさんは、畑にあるバケツに入った雨水でしょうか、顔を洗い出しました。
「寒くない?それに、汚くない?」
どうしてそんな畑にある水で顔を洗うのか、本当に不思議でした。
ふと、おじさんが慌てて服を着だしました。
「どうしたんだろう?あんなに慌てて」
そう思って見ていると、向こうの道路の方から警察官らしき服を着た男の人達が数人走ってきました。
なんだか叫び声をあげながらおじさんを追う警察官達の顔は緊張し、ある人は怒っているようです。
数人がかりでおじさんを取り押さえると、手錠をして、連行していきました。
後からわかったことなのですが、あのおじさんは逃亡犯だったそうです。
もしも家の方に来て、入られたらそれこそ怖かったなと思った出来事でした。
え、怖!
逃亡犯、もとい犯罪者に同情の余地はないけど、やっぱりちょっとだけ哀れでもある。
にしてもシンプルで薄ら怖い、いいね!