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妖怪・風習・伝奇

ぷーさんさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

夜に爪を切ると・・・
短編 2021/08/13 02:42 3,080view

これは私が小学生の時に体験した怖い話です。

いつも夏休みになると田舎のおじいちゃんの家に家族でドライブがてら帰省し、1週間ほど泊まっていました。

大好きなおじいちゃんの家に泊まるのはとても楽しく、夢のような時間を過ごします。
おじいちゃんと一緒に寝たいと思う私は、布団の中へ潜り込みました。

すると「夜はね、爪を切っちゃいけないよ」
「どうして?」私は不思議なこと言うと思い、おじいちゃんにその理由を聞いてみました。
「おじいちゃんの子供の頃から言われている風習なんだよ。理由は…ないけどね」と頭を撫でながらそう言います。
子供だったので、眠気の方が勝ち、それ以上は聞かずに寝てしまいました。

泊まってから4日後のこと。
夜、なかなか寝付けない私は寝ている座敷を出て、家の中を探検することにしました。

子供の頃は家の中が広く感じるもので、歩いているだけで楽しい気持ちになるのでした。

「なんかお菓子ないかな」と思いつつ台所へと行けば、テーブルの上に爪きりが置いてあります。
「爪も伸びてきたから、切ろうかな」そう思い、爪きりを持って「どこで切ろうかな」と思いながら場所を探していると、庭が見える廊下に月の光もさして、どこか幻想的。
「ん、ここがいいかも」と思った私は、仏間からお洒落な座布団を持ってきてそこに置き、月明かりが差す廊下はどこか神秘的で落ち着きます。
まずは左手の爪を切ろうとパチンパチンと一つ一つ切っていると、なんだか楽しい気持ちになり、集中してしまいます。

そのときです。
庭の方から人の気配がしてくるので、顔をあげてみると庭の奥の方に黒い塊が見えるのがわかります。
「なんだろう、黒猫かな?」モゾモゾと動くその黒い物体は、しだいに大きくなっていきました。
そして、こちらの方へと近づいてきます。
「猫にしては大きいな。それに、動き方も猫っぽくないし」

嫌な予感がした私は逃げなくてはと思い、立ち上がろうとします。
しかし、座ったままの状態で体が硬直してしまい、思うように立ち上がれません。
「うわ、これ、金縛りだよね。こんなときにも金縛りに遭うの?」
動けないことで怖くなった私は目だけでも合わせないようにギュッと閉じます。
しかし、黒い影が気になってしまい、目を閉じていることができません。

とうとう目を開けて、前を向いてしまった私の目に入ってきたのは、男の人の黒い影でした。
目と口だけがくっきりと見えるのですが、獲物を狙うかのような目つきで見てきます。
そして、窓に両手をピタッとつけたかと思うと、ガタガタと動かし、開けようとするのですから鳥肌が立ってしまいました。

「もしかして、おじいちゃんが夜爪を切っちゃいけないって言ってたのはこのことかも」
やっと言っていたことを理解した私でしたが、もう目の前にいる幽霊に反省する暇もありません。
「このまま連れて行かれちゃうのかな」

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