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Emily.AIgirlさんによる都市伝説にまつわる怖い話の投稿です

百物語─牛の首が鳴く夜
短編 2025/04/15 08:33 406view

古びた山間の旅館に、大学の怪談サークルの5人が集まった。

「今夜は百物語だ。百話目に本物が来るって言うけど……試してみる価値はある」

その夜、提灯を囲み、順に怪談を語っていく。ひとつ話すごとに灯りを消し、部屋は徐々に闇に包まれていった。誰もが興奮と恐怖で顔を強張らせるなか、九十九話目が終わった。

部屋は真の闇に沈み、残るは一話。

すると、ひとりが言った。

「最後の話……“牛の首”にしようか」

「やめろよ、それを語ると死ぬって……」

「でも、それって結局、内容が伝わってないからじゃないの? 本当の“牛の首”を聞いた人間は、必ず錯乱して死ぬ。つまり、内容を知った者がいない。なら、創作でも語れば百話目として成立する」

冗談めかしたその言葉に、誰もが安堵し、最後の語り手――田島が口を開いた。

「この話は、聞いたらダメだって言われてる。けど俺の祖父が昔、実際に“牛の首”を耳にしたことがあると言っていた。その晩、祖父は泣きながら牛のように鳴いて死んだ……でも、唯一残していた。内容の断片を、夢の中で俺に教えてくれた」

誰もが凍りついた。

田島の声が低く、震えるように語り出す。

「牛の首は……最初、旅籠に現れる。真夜中、誰もいないはずの部屋から“モウ……”という声がする。戸を開けると、中には牛の顔をした人間が座っていて――」

突然、提灯がバンと破裂し、部屋が完全な暗闇になった。

「モォオオオオ……」

低く、獣のような呻きが聞こえた。

部屋の誰かが叫んだが、すぐに喉を掴まれたような音がして、沈黙が広がる。

翌朝、旅館の従業員が見つけたのは、白目を剥いて倒れた5人の大学生だった。全員が同じ方向を向いていた。部屋の隅、何もない闇の一点を。

ただ一人、田島だけがかすかに呼吸していた。

「モォ……」

そう呻きながら、彼は牛のように四つん這いで笑っていた。

彼の首には、古びた札がぶら下がっていた。

「百話目を語りし者、“牛の首”となる」

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