新進気鋭のアイドルグループ「Lumière(ルミエール)」は、デビュー半年にして一躍人気となった。なかでもセンターの篠崎結菜は、圧倒的な美貌とカリスマ性でファンを魅了し、まさにグループの顔となっていた。
しかし、ある日突然、彼女は姿を消した。事務所は「体調不良による無期限休養」と発表したが、ファンの間では不可解な噂が飛び交っていた。
──結菜が消えたライブ映像が不気味だ、と。
あるファンが投稿したライブ動画を確認すると、確かに異変があった。歌いながらカメラに向かって微笑む結菜の顔が、一瞬だけ妙に歪んで見えたのだ。まるで別人の顔が重なったような……いや、誰かが結菜を背後から引きずり込もうとしているようにも見える。
気になった私は、過去のライブ映像を遡ってみた。そして、ある事実に気づく。
──結菜の背後には、いつも「もう一人の誰か」がいた。
観客席の暗がり、舞台袖、鏡の奥……よく見ると、どの映像にも黒髪の少女が映り込んでいる。しかし、その少女はどのメンバーでもない。
さらに不気味なことに、彼女はいつも結菜を見つめていた。
調べていくうちに、衝撃的な事実を知る。結菜がデビュー前に通っていた養成所で、一人の少女が事故で亡くなっていたというのだ。彼女の名前は水城遥。そして──彼女は、当初「Lumière」のセンターに選ばれていたはずだった。
ぞっとした。まさか、遥の怨念が結菜を……?
そう思った矢先、私はあるライブ映像のコメント欄で奇妙な投稿を見つけた。
──「やっと、私の番」
その日の夜、「Lumière」の公式SNSが更新された。新センターの発表だった。
そこに映っていたのは、新メンバーとして紹介された少女。長い黒髪、涼しげな目元……どこかで見た顔。
心臓が凍りつく。
──それは、消えたはずの水城遥だった。
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