私が自宅でイザベル・アジャーニ主演の女性芸術家の伝記映画「カミーユ・クローデル」を見ている時、スマホから着信があった。私は電話に出る。
「へい、大鷹!今ダイジョービ?」
電話の相手はフリーライターの剣崎からであった。剣崎はオカルトや性風俗関連といったアングラな記事を書くことを専門としている。
「もしかして、パパ活の取材の事で何かトラブルでも巻き込まれたんですか?ヤーさんに絡まれたとか?」
「おいおい。そんなチャチなもんじゃないよ。とにかく、今から会えるか?」
「うーん。私は今から「カミーユ・クローデル」を見るから明日にしてくれませんか?」
「おいおい、俺はもうお前んちに到着したぜ。んじゃ一緒に「カミーユ・クローデル」を見ようじゃないの?」
私は急いで外を見る。外に剣崎の愛車であるユーノス・ロードスターが止まっていた。それにしてもボンネットがボコボコだ。これはどー見てもただ事ではない。一体、何があったんだろう?私はそんな事を考えながらこう呟く。
「ああ、もう!」
私は急いで外に出た。剣崎はニヤケながら
「やぁやぁ、大鷹クン。お出迎え、ご苦労。まぁそんなにカッカすんなよ。大鷹クンの為に握り寿司とアサヒビール買って来たぜ!」
と握り寿司とアサヒビールの入ったビニール袋を私の目の前に見せる。
「おお!久しぶりにお寿司だ!」
さて、リビンクで私と剣崎は夕食を取っていた。勿論、前述の「カミーユ・クローデル」を見ながらである。私は剣崎に
「パパ活の取材中に何か恐ろしい話を聞いたんですね?」
と質問する。
「なぁ、大鷹。「ピーラー女」って知っているか?」
「パパ活女子が男相手にピーラー振り回す基地外女ですか?」
「そーゆーわけじゃないんだが・・・俺が昔、知り合いのライターから聞いた話なんだけど、ある少女が日常的にクズで身勝手な母親に虐待されていたんだ。母親はどーみてもストレス解消で虐待を行っていたんだ。ついに母親はピーラーで少女の身体をズタズタにしたらしいんだ」
「ははぁん、それでパパ活相手の男に自分の身体を見せるわけですね」
「ああ。男に向かって「こんな体でも私を愛してくれますか」ってさ・・・。相手の男なんて金で女を買うスケベなのによ。大鷹よ、嫌な話をして済まねえな、とかく、パパ活している女子の間では「ピーラー女」の噂は有名なんだ。実はな・・・」
剣崎はここまで来る時に起こったことを話した。
剣崎は一通りの取材終えると、ユーノスロードスターに乗り込んだ。
「取材も終わったし、久々に大鷹の家に行ってみるか。あ、そーだ!あいつの為に寿司でも買ってやるか、あいつ大喜びするぞ、はははッ」
剣崎は笑いながら、ロードスターのエンジンをかけ、車を発進しようとした時、前のボンネットに女が立っていた。女はフロントガラスをのぞき込む。手にはピーラーが握られていたのだ。
「通り魔か!不味い、ロードスターはオープンの状態にしていた!これは大いにマズイ!」
剣崎の心臓の鼓動は高まる。剣崎は急いでドアをロックする。ピーラー女はロードスターのドアをガチャガチャ開け始めた。剣崎は身構える。ピーラー女は後方に回った。剣崎も後ろを見る。剣崎は護身用のナックルを手に装着する。ピーラー女はロードスターのトランクに飛び乗る。その時、
「大丈夫か!」
という大声が聞こえた。足音がこちらの方に向かってきた。ピーラー女は急いでその場から去っていった。剣崎は足音の方を見る。
「なんだ、白上と青星か・・・」
白上と青星は剣崎の親友である。白上は息を切らしながら
「ピーラー女がこっちの方に向かってきたけどみたか?」
という。剣崎は
「ああ。あの「ピーラー女」は俺を殺そうとしやがったんだ」
と言った。白上は
「うわぁ~そいつぁ酷いや。「ピーラー女」は噂通りマジモンの現金や車を強奪する凶悪犯だったんだな。武器はピーラーだけでだが・・・」
と呟く。剣崎は白上の発言に対してこう言った。
「は、白上?それって一体、どーゆー事なんだ?俺にはさっぱりわからないんだが・・・」
青星は冷静な口調でこう言った。
「さっき、ATMを貯金を下ろした主婦にピーラーを持った女が主婦に襲い掛かって、主婦を怪我させた後、金を奪って逃走したんだ。俺たちはその現場を見て、ピーラー女を追いかけたわけなんだよ。多分、剣崎はこの話を初めて聞くかもしれないけど、パパ活女子相手に語り継がれる都市伝説「ピーラー女」っていうのは実際はATMでお金をおろした客相手にピーラーを振り回して、襲い掛かって金を奪う強盗が真相なんだ」

























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