長野県には数多くの心霊スポットがあるが、その中でも「旧◯◯トンネル」は地元で恐れられている場所のひとつだ。現在は新トンネルが開通し、旧トンネルは使われていないが、今でも肝試しに訪れる者は後を絶たない。
消えた友人
ある年の夏、大学生の健一、翔太、由美の三人は肝試しのために旧◯◯トンネルへと向かった。事前に調べたところ、ここでは「トンネルの奥で誰かの声を聞いたら決して返事をしてはいけない」と言われていた。だが、そんな噂はただの作り話だと彼らは思っていた。
車を降り、懐中電灯を手にトンネルへ足を踏み入れる。湿った空気とカビ臭い匂いが漂い、壁には苔が生えていた。途中までは何もなかった。しかし、トンネルの奥へ進むにつれ、足元からひんやりとした冷気が這い上がってくるのを感じた。
「…おーい」
突然、背後から誰かの声がした。
「え?」
健一が振り返るが、そこには翔太と由美しかいない。二人も同じように驚いた顔をしている。
「今、聞こえたよな?」翔太が不安げに言う。
「…気のせいじゃない?」由美は笑おうとするが、その声はわずかに震えていた。
三人はそのまま奥へ進んだ。すると再び、今度はもっとはっきりとした声が響いた。
「おーい…」
それは、確かに翔太の名前を呼んでいた。
「おい、誰かいるのか?」翔太が反射的に声を張り上げた瞬間、空気が一変した。
「…しまった…」
健一と由美が息を呑む。翔太の返事が、噂の「決して返事をしてはいけない」状況に当てはまってしまったのだ。
次の瞬間、トンネルの奥からズズズ…と何かを引きずるような音が聞こえてきた。懐中電灯を向けるが、光の先には闇しかない。だが、その闇の中に「何か」がいる気配がした。
「逃げるぞ!」健一が叫び、三人は元来た道を走り出した。だが、翔太の足が突然止まる。
「お、おかしい…体が動かない…」
翔太の顔が歪む。まるで何かに足を掴まれているかのようだった。
「翔太!」
由美が手を伸ばすが、その瞬間、トンネルの奥から長い黒髪の女がゆっくりと現れた。顔はぼんやりとしており、まるで霧の中から滲み出るようだった。
「お前…呼んだよな…」
低く響く声。次の瞬間、翔太の体がふわりと浮き、何かに引きずられるように奥へと消えていった。
健一と由美は必死でトンネルを抜け、車に飛び乗った。だが、振り返った時には、翔太の姿はどこにもなかった。
その後
警察に通報したが、翔太は行方不明のままだった。彼のスマホはトンネルの入口付近で発見されたが、それには奇妙な音声が録音されていた。
「おーい…おーい…」
何度も呼びかける声。その最後に、小さくかすれた翔太の声が残っていた。
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