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ヒトコワ

鬼笑いの語り部さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

繰り返す日常
短編 2025/03/19 08:59 1,037view

いつものように目が覚めると、見慣れた天井がそこにあった。昨夜見た悪夢の残滓が、まだ頭の隅に残っている。夢の中で私は、終わりのない廊下をただひたすらに走り続けていた。

(今日もまた、同じ一日が始まるのか…)

そう思うと、体の奥底からじわじわと嫌な汗が滲み出てくるのを感じた。

朝食のパンを口に詰め込み、いつもの時間に家を出る。通い慣れた道を歩き、毎日利用する駅へと向かう。電車に揺られ、見慣れた景色を眺めていると、ふと、あることに気がついた。

(今日の服、昨日と全く同じだ…)

昨日も、その前も、私はいつも同じ服を着ていた。まるで制服のように。

(まさか…)

背筋がゾッとした。周囲を見渡すと、他の乗客たちも皆、同じ服を着ている。表情はどこか抜け落ちていて、まるで生きた人形のようだ。

(これは、一体…?)

恐怖で心臓が早鐘のように鳴り響く。駅に着き、会社へと向かう。オフィスに入ると、同僚たちがいつもと変わらない様子で働いていた。しかし、彼らの顔もまた、どこか生気を失っている。

(一体、何が起こっているんだ…?)

私は自分の席に座り、パソコンに向かった。しかし、画面に映る文字は全て意味不明な記号に変わっていた。

(これは、現実なのか…?)

混乱と恐怖で頭が真っ白になる。その時、ふと、机の上に置かれたカレンダーが目に入った。そこには、同じ日付が何度も何度も記されていた。

(繰り返す日常…)

悪夢で見た終わりのない廊下が、脳裏に蘇る。私は立ち上がり、オフィスを飛び出した。廊下を走り、階段を駆け下りる。しかし、どこへ行っても、同じ景色が広がっている。

(逃げられない…)

絶望が全身を包み込む。その時、背後から何者かの気配を感じた。ゆっくりと振り返ると、そこには…

(…私?)

そこに立っていたのは、私と全く同じ姿をした、しかし、表情のない、抜け殻のような存在だった。

「あなたは、もうすぐ私たちと同じになる」

その声は、まるで機械のように無機質だった。

(私たち…?)

周囲を見渡すと、そこには無数の「私」が立っていた。彼らは皆、同じ服を着て、同じ表情で、私を見つめている。

(私は、一体…?)

恐怖で声も出ない。その時、「私」たちは一斉に私に向かって歩き始めた。

(嫌だ…)

私は逃げようとした。しかし、足は鉛のように重く、一歩も動かない。

(助けて…)

心の中で叫んだ。しかし、その声は誰にも届かない。

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コメント(2)
  • 夢?現実?

    2025/03/19/10:27
  • 語り主:想像に任せます(o^―^o)ニコ

    2025/03/24/10:38

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