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不思議体験

鬼笑いの語り部さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

いる
短編 2025/04/26 19:05 1,032view
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これは私が2~3年前住んでいたマンションで体験した怖い話をお話します。

夜の帳が下りた大阪。賑やかだった道頓堀の喧騒も、今は遠い波の音のように聞こえる。一人暮らしのマンション、その静けさが今日はやけに重く感じられた。

リビングの隅に置かれた古い木製の棚。それは祖母の形見で、子供の頃から見慣れたものだった。しかし、今夜はなぜか、その棚の奥に黒い影が見えた気がした。気のせいだろうと目を凝らすが、暗闇に溶け込むように、それはただ「いる」。

心臓の音が早くなるのを感じながら、電気のスイッチに手を伸ばした。パチッという音と共に部屋が明るくなる。しかし、棚の奥には何もなかった。

「疲れているのかな」

そう呟いて、冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出す。喉を潤しながら、もう一度棚の方を見た。やはり、何もいない。

安堵のため息をつき、テレビのリモコンに手を伸ばしたその時だった。背後から、かすかな衣擦れの音が聞こえた。振り返ると、廊下の先に人影のようなものが立っている。

「誰…?」

声をかけるが、返事はない。ただ、そこに「いる」。ゆっくりと近づいてくる影。街灯の光を浴びて、それは次第に輪郭を現し始める。それは、見慣れない着物を着た、顔の見えない女性だった。

恐怖で足がすくみ、声も出ない。女性は無言のまま、じりじりと距離を詰めてくる。その手がゆっくりと上がり、こちらへ伸びてくる。

逃げなければ。そう思った瞬間、玄関のチャイムがけたたましく鳴り響いた。

ビクッとして女性の方を見ると、影は揺らぎ、まるで水面に落ちた墨のようにじわりと薄れていく。そして、チャイムの音が再び鳴った時、完全に消え去っていた。

ドアを開けると、宅配業者が困った顔で立っていた。「あの、お届け物ですけど…」

サインをして荷物を受け取り、ドアを閉める。冷や汗が背中を伝っていた。一体、あれは何だったのだろうか。

リビングに戻り、棚の方を恐る恐る見る。いつもと変わらない、ただの古い木製の棚。しかし、さっきまでそこに確かに「いた」影の感触が、まだ肌に残っているようだった。

その夜、私は眠ることができなかった。棚の奥の暗闇が、ずっと気になって仕方なかった。もしかしたら、今もそこに「いる」のかもしれない。そう思うと、背筋がゾッとした。

次の日、祖母の形見の棚を丁寧に拭いた。何十年も前のものだから、何か謂れがあるのかもしれない。ふと、棚の隅に小さな染みのようなものを見つけた。指で擦ってみるが、落ちない。よく見ると、それは小さな文字のようだった。

目を凝らして読んでみると、そこにはかすれた文字でこう書かれていた。

「…ここに、いる」

背筋に氷のようなものが走り抜けた。昨夜の影、そして今朝見つけた文字。全てが繋がった気がした。この棚には、何かが「いる」。そして、それは今も、私のすぐそばにいるのかもしれない。

夜が来るのが、恐ろしかった

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コメント(1)
  • いやーひかえめにいっておしっこもれそうです。
    おしっこいります?

    2025/07/09/15:58

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