私には病弱な妹が居た。病気で学校には通えず、ずっと家の中にいた。母や父は妹に付きっきりで看病していたし、私も妹の病気が早く治る様願っていた。けれど数年前、妹は亡くなった。病状が悪化したのだろう。私はあの時を思い出せない。妹が亡くなる直前にあった事を。
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1.思い出せない
一度起きてしまうと中々寝付けない。私は夜中、目が覚めてしまった。時計を見ると、もうすぐ深夜の一時になる。私はベッドから降りて、リビングに向かった。電気を灯して食器棚からマグカップを取り出す。冷蔵庫の中にある牛乳をとぽとぽと注ぎ、電子レンジで温める。温かくなった牛乳を持ってソファに腰掛けた。そして、一口ホットミルクを啜った時だった。
「だってホットミルクが好きでしょ?」
耳元ではっきりと声がした。驚いて振り返るも誰もいない。でも、それは確実に妹の声だった。
スマホで日付を確認する。三月◯◯日、深夜一時七分。妹の命日だ。
そして気付いた。私は妹が亡くなる直前の事を思い出せないんじゃない。
思い出したくなかったのだ。
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2.形を帯びる記憶と妹の死因
「お姉ちゃん起きて」
妹が私を揺さぶっている。
私「何…?こんな時間に…」
時計を見ると、もうすぐ深夜の一時。
妹「眠れないから、ホットミルク作って」
私は少し寝ぼけながら妹とキッチンへ向かう。
私「リビングで待ってて。」
妹「うん。」
妹は病弱だ。その所為で母も父も妹にしか相手をせず、私の事なんて微塵も考えてない。最後に話したのはいつだっけ。妹さえいなければ、私は幸せになれただろう。
妹がいなくなれば。
私はナッツアレルギーの妹の牛乳に、ナッツを砕いた粉を入れた。
そのホットミルクを妹に渡す。最初は美味しいと言っていた妹が苦しみ始める。
妹「なん…で…」
ヒューヒューと音を立てて、踠いている。
私「だってホットミルクが好きでしょ?」
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3.醜い
そうだ。妹は病状が悪化したんじゃない。私が殺した。ずっと思い出したくなかっただけだった。でも、仕方がなかった。こうでもしなきゃ私は今幸せになってなかっただろう。妹は生きてても親に迷惑を掛けているだけだ。そもそも死因が好きな飲み物であっただけ良いと思う。どうせいつか人は死ぬんだから。だから私は悪くない。


























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