金曜の夜、いつものように風呂に浸かりながら、YouTubeで動画サイトを見ている時だった。
バンバンバンバンバンバンバン♪
突然大きな音が鳴り、驚いた私は、音の鳴る方に首を向けた。
音が鳴ったのは、すりガラス製の風呂扉だった。すぐに扉を開け洗面室を確認するが、誰も居ない。
私はオカルトの類いには比較的否定的な方だった為、不思議に思いつつも、風呂に入って動画視聴を再開した。その時、
バンバン バン バンバン バン バンバンバンバン バンバンバン♪
まるでリズムを取るかのように、扉がまた鳴った。流石に恐怖した私は、すぐさま風呂から上がった。
そして、家の中に不審者がいないことを確認したあと、馬鹿だな、と自分でも思うが、もう一度風呂に入り直した。風呂の温かさで、少し気持ちが落ち着いたところだった。
バンバン バン バンバン バン バンバンバン♪
動揺した。こうなると、流石に自然現象とは思えない。それと、不審者でもないだろう。さっき部屋の隅々を確認したばかりだ。
ああ、念仏でも覚えておくべきだったろうか。
人間というのは、あまりの恐怖に対面すると脳が働かなくなるようだ。恐ろしいのに、風呂に入ったまま少しも動けなかった。
バンババンバン バンバンバン ババンバン♪
バババンバン バンババン♪
バンバンバン バン バンババンバン♪
私は気づいた。
この音は、リズムを取っている。
そう考えると、何だかこの状況がおかしく思えてきた。
バンバン バンバン バン♪
バン バババン バンバンババ♪
流石に扉を開けるほどの勇気はないが、さっきほど動揺はしていなかった。
だって、このリズミカルな音はなんだ?こういった状況って、怪談ではありがちだが、もっと、無機質に叩くもんだ。
…私の頭には、今、かわいい幽霊の姿が浮かんでいた。
六、七歳の男の子の幽霊。なぜ対象が俺なのかは分からないが、きっと純粋な気持ちで、いたずらをしているだけないか?
少なくとも、貞子のような姿をした霊がこんなことをする気はしない。
バンバン♪
バババンバン バンバン♪
そう考えると、怖くなんかない。
すりガラスの先には何も写っていないが、私には、無邪気に笑って俺の反応を楽しむ子供が見えるようだった。
バンバン バンバンバンバン♪
ババ ババンバン バン♪
子供じゃなくて巨人だった