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心霊

どこかで見た話さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

女にされた日
短編 2025/12/08 23:42 199view

 夜の玄関に足を踏み入れた瞬間、
 わたしは息を吐き出すようにして鞄を落とした。
 今日は、ほんとにしんどかった。
 彼氏とのすれ違いが限界で、胸の奥がきしむように痛む。

 声をかけられたのは、その時だった。

「……その顔、どないしたん?」

 振り返ると、あいつがいた。
 家に勝手に入った理由なんて説明しないのに、
 なぜか怒る気にもならないほど、
 柔らかく笑っていた。

「それは彼氏さんが悪いわ。
 俺なら、そんな思い絶対させへんのにな」

 その言い方が、心の弱いところにそっと触れてくる。
 涙の出そうな浅い傷口に指を滑らせて、
 「大丈夫やって」と笑うみたいな、
 反則的な優しさ。

「お前は妹みたいなもんやからさ。
 でもそんな顔、見てられんわ」

 ――妹みたい。
 いつもそう言うくせに、距離は近すぎる。

 耳の後ろに触れる吐息が熱くて、
 痛みよりも先に身体の力が抜けてしまう。

 慰められてるのか、口説かれてるのか。
 どっちかなんて考える前に、
 わたしはもう、甘さに沈みかけていた。

 その夜。
 布団の中にいても眠れずにいると、
 ふっと、耳の奥で声がした。

「また考えてんのやろ。
 疲れんでええねん、預けたらええ」

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関連タグ: #事故物件#声#記憶
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