この話を読んでくれている方。
ぜひ、今自分がいる空間にある、【隙間】を探してみていただきたい。
探してみてくれたでしょうか。
…
とある家に強盗が押し入り、夫妻と長男からなる一家を惨殺後、金を奪い逃亡。
そんな事件があった。
犯人は、冷蔵庫と壁の隙間に、無理やり死体を隠した。長くない隙間だったので、床に横にして寝かされた、三人の首と頭だけが隙間から飛び出してしまった。
三人の死体は、虚な眼で逃げる犯人を見つめていた。
その家に警察の調査が入った頃だった。
例の事件の犯人が、家の押し入れの隙間に、骨や内臓が圧縮されて押し込められ、さらに首から先だけが、ぬ〜っと横を向いて飛び出している状態の、あまりに不可解な死体として発見された。
小学生の頃、そんな話が地域で「一家惨殺の呪い」と名付けられ、都市伝説として流行りました。とてもありがちな話ですが、当時はみんな怖がっていました。怖がる女子を、ヤンチャな男子がからかっていたのが、印象的でした。
そして、その都市伝説を誰も話さなくなってしばらく、本当に怖いことが起きました。
自分の地域で、例の犯人に似た状態の死体が、いくつ見つかったのです。
例えば、ソファの下や、換気扇の中。少し開いたカーテンの隙間。身体がしわくちゃになり、頭だけがぬ〜っと飛び出て横を向いている死体。
警察が幾度に渡り検証するも、結局「不審死」として片付けられたのだとか。
大したオチもありませんが、間違いなく現実の出来事です。
「一家惨殺の呪い」が本当かも分からない。私の地域で起こった怪死事件との関連性も分からない。でも、私は、時々隙間が怖くなります。
今も家のそこかしこにある隙間から、三つの頭が、虚な眼でこちらを覗いているのではないか?隙間に引きずり込もうとしているのではないか?と。
隙間は、どこにでもあるものです。
【隙間】
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