究極の事故物件の話
投稿者:ねこじろう (153)
桜庭から電話があったのは、昨晩のことだ。
なんでも新たに賃貸マンションに引っ越したらしくて、今度の日曜に遊びに来ないか?ということだった。
あいつとは大学の時以来の、久しぶりの再会だった。
二人とも地元の会社に就職してからかれこれ10年が経過し、お互い今年で33になる。
それで俺は秋晴れの日曜の午後、前もって送ってもらった位置情報を頼りに車で出かけた。
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マンションは市郊外の山あいにある10階建てだった。
外観は見るからに高級そうな感じで、よくこんなところ借りれたなあというのが第一印象だ。
部屋は10階の角部屋ということで予め言われていた駐車スペースに停めてから、エントランスに進む。
部屋番号を押し来客用の呼び出しボタンを押すと小気味良いチャイムの後「おお、よく来たな。玄関開けてるから」という声がして、入口ドアが開いた。
中はまるでホテルのフロントのような雰囲気だ。
エレベーター10階で下り一番奥の1006の部屋前まで歩くと、玄関ドアを開く。
広い玄関口に立ち、一声かけてから大理石調の廊下に上がる。
廊下沿いには向かい合って4部屋あった。
一番奥リビングのドアまで歩くと、ゆっくり開く。
そしてハッと息を飲んだ。
奥に並ぶ大きなサッシ窓のカーテンは開いていて、街の外観がパノラマのように広がっている。
10帖はある広々としたリビングには毛足の長いベージュのカーペットが敷き詰められていて、明るく清潔な雰囲気を醸し出していた。
手前にはアンティークなダイニングテーブルが、奥には豪華なソファーセットがある。
桜庭がそこにこちら向きに座り、にこやかに微笑んでいた。
「まあ座れよ」と、目の前のソファーを薦める。
それから俺たちは向かい合いコーヒーを飲みながら10年の空白を埋めるかのように、仕事のことプライベートのこと様々なことを話した。
相変わらず互いに独身で、俺は今彼女がいるが、桜庭は最近長く付き合っていた女性に振られたらしい。
長く住んでいたぼろアパートを引っ越したのも、彼女への未練を断ち切りたかったということだった。
話が一段落ついたところで、俺は気になっていたことを彼に尋ねる。
「ところで、ここってすごく高級な感じなんだけど、間取りとか家賃は?」
コーヒーを飲み終えた桜庭がニヤリと微笑むと口を開いた。
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