それは、、
朝から空にはどんよりした不穏な雲がたちこめる、
令和○年1月6日のことだった。
市中心部の会社に勤める独身サラリーマンの笹井は仕事後、珍しく同僚と居酒屋で飲む。
というのは明日は彼の誕生日であり、普段から公私ともに親しくしている同僚が祝ってあげようと誘ってくれたからだった。
混みあった居酒屋店内の奥まったところにあるカウンターに彼らは並び座ると、
「いよいよ三十路突入おめでとう。
お前も明日からとうとうオッサンの仲間入りだな」
という同僚の言葉とともに、二人はジョッキを軽く衝突させる。
カチンという小気味良い音とともにしばらく二人は下らない四方山話に花を咲かせていた。
そしてどれ程が経った頃か?同僚はピンク色に上気した顔で笹井にこんなことを問う。
「ところでお前、生まれ変わりとか信じるか?」
いきなりの話題転換に笹井は戸惑いながらもしばらく思案した後、
「そうだな、信じる、、というより信じたいかな」と曖昧に答えた。
「俺もだ。
じゃあもし生まれ変われるとして、次はどうなりたい?」
再び笹井は頬杖をついて考えると、口を開く。
「そうだなあサラリーマンはもう十分堪能したから、今度は全く違った仕事をやりたいかな。
俺、車好きだからトラックやタクシーの運転手とか良いかもな」
※※※※※※※※※※
久しぶりの外飲みで笹井も同僚もかなり酔っぱらい時間感覚が麻痺してしまっていたせいか、二人とも終電を逃してしまう。
それで各々タクシーを拾い、帰宅の途に付く。
自宅マンションまでは約一時間。
運転手に行き先を告げた彼は左側のドアにもたれかかり、流れ行く景色をボンヤリ眺めながらうとうとしていた。
そんな時だ。
「お客さん」と唐突に運転手の声がする。
正気に戻った笹井は右手に視線をやった。
50歳いや60歳くらいだろうか?
怖すぎる。みちづれは、やめてくれ。
コメントありがとうございます。
━ねこじろう
どういう意味ですか