腕から感じる霊感
投稿者:有野優樹 (11)
「なんとも言いようがなくて。腕から感じる‥としか。見えるとか気配を感じたことがあるという人はいるかもしれませんが、もし腕から感じたことがあるという人がいたら是非、教えてください」
前職で看護師をしていた美幸さんが、数十年前に都内の某病院に勤めていたときの体験談。
ある日の夜中、重病の患者さんを迎え入れた。医師達が緊急で手術を行うのかどうかの判断をしている中、美幸さんはその患者さんのカルテを持ってエレベーターに乗った。
病室は五階。ボタンを押すと扉が閉まる。
二階、三階、四階‥あと一階で着くというとき、五階のボタンが光っているにも関わらず六階、七階‥と、まるでエレベーターに意識があるかのようにどんどんと上の階へ進んでいった。
八階、九階と適当にボタンを押してどこかで止まらないかと慌てるが、ボタンは光るだけで止まらない。無情にも最上階に連れて行かれ、扉が開いた。
屋上に出るための鉄扉に続く廊下。この世から全ての音が無くなってしまったのかと思われるくらいの静けさ。見慣れた光景に唖然としていると、ひとつ違和感を感じた。
屋上に出るための鉄扉が開いている。
エレベーターの中から扉越しに少しの夜空が見えた。当たり前だが、こんな時間に開いているはずがない。
徘徊をしてしまう患者も居るため、院内散歩などの理由がない限りは開けることはない。まして、開けっぱなしにしているなんてことは絶対に。
すると腕に“あの感覚”がきた。
なんとも言いようがない腕から感じる気配。鉄扉から目が離せないでいると、低学年か年長ほどの子供が自分に向かって走って向かってくるのがわかった。
急いでボタンを連打するが閉まることのない扉。
暗くてよくわからなかった表情が明確にわかる距離まで迫ってきている。自分の意思で連打をしているのか、怖さで手が震えているのか判別がつかないくらい無我夢中で押し続けた。
しかし、そのかい虚しく子供は乗ってきてしまった。
「アソボ、アソボ、アソボ」
昔から見えざるものが見えていた美幸さんは、恐怖心もあったが多少は慣れていた。こういう場合に怖がってはいけないと思い
「ごめんね、遊べないの。生きてる人の方が大事だから私を帰らせて!」
と怖さ半分、仕事に戻らなければならないという憤り半分で言い切った。すると聞き分けがよかったのか、その子供は速やかにいなくなり五階のボタンがパッとつき扉が閉まった。何事もなかったように動き出したエレベーターは、本来の目的地である五階まですんなりと降りた。
必死でボタンを押して赤くなった指先が呆気ないくらいに。無事にカルテを持っていき、その日の業務を終えた。
「ちゃんと伝えればわかってくれる人もいると思うんです。自分には何もできないと。細かい体験談は色々とあるんですが、これが1番怖かったことですかね。そしてもし、私と同じような感じ方をしたことがあるという人が居たら教えてください。腕から感じる以外に上手く言えなくて。」
腕から感じたことがあるという方は、教えてください。
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