「なんとも言いようがなくて。腕から感じる‥としか。見えるとか気配を感じたことがあるという人はいるかもしれませんが、もし腕から感じたことがあるという人がいたら是非、教えてください」
自分だとわからないようにしてくれたらという条件で公開の承諾を頂いた。そのため、名前や場所などを仮名や某で表現することのご理解を頂きたい。読者様の歩み寄りに感謝致します。
前職で看護師をしていた美幸さんが、数十年前に都内の某病院に勤めていたときの体験談である。
ある日の夜中、重病の患者さんを迎え入れた。医師達が緊急で手術を行うのかどうかの判断をしている中、美幸さんはその患者さんのカルテを持ってエレベーターに乗った。
病室は五階。ボタンを押すと扉が閉まる。
二階、三階、四階‥あと一階で着くというとき、五階のボタンが光っているにも関わらず六階、七階‥と、まるでエレベーターに意識があるかのようにどんどんと上の階へ上がっていった。
八階、九階と適当にボタンを押してどこかで止まらないかと慌てるが、ボタンは光るだけで止まらない。
無情にも最上階に連れて行かれ、扉が開いた。屋上に出るための鉄扉に続く廊下。この世から全ての音が無くなってしまったのかと思われるくらいの静けさ。見慣れた光景に唖然としていると違和感を感じた。
“屋上に出るための鉄扉が開いている‥?”
当たり前だが、こんな時間に開いているはずがない。徘徊をしてしまう患者も居るため、院内散歩などの理由がない限りは開けることはない。まして、開けっぱなしにしているなんてことは絶対に。
すると、腕に、あの感覚がきた。
なんとも言いようがない、腕から感じる気配。
鉄扉から目が離せないでいると、小学校低学年くらいの子供が、自分に向かって走って向かってくるのがわかった。
ボタンを連打する。
閉まらない扉。
暗くてよくわからない子供の表情。
自分の意思で連打をしているのか、怖さで手が震えているのか判別がつかないくらい無我夢中で押し続けた。
「アソボ、アソボ、アソボ」
子供の表情が、見えた。
昔から見えざるものが見えていた美幸さんは、恐怖心もあったが多少は慣れていた。こういう場合、怖がってはいけないと思い
「ごめんね、遊べないの。生きてる人の方が大事だから私を帰らせて!」
と怖さ半分、仕事に戻らなければならないという憤り半分で言い切った。すると聞き分けがよかったのか、その子供は速やかにいなくなり五階のボタンがパッとつき扉が閉まった。
何事もなかったように動き出したエレベーターは、本来の目的地である五階へ降りた。必死にボタンを押して、赤くなった指先が呆気ない。無事にカルテを持っていき、その日の業務を終えた。
「ちゃんと伝えればわかってくれる人もいると思うんです。自分には何もできないと。細かい体験談は色々とあるんですが、これが1番怖かったことですかね。そしてもし、私と同じような感じ方をしたことがあるという人が居たら教えてください。腕から感じる以外に上手く言えなくて。」
腕から感じることがあるという経験をお持ちの方が居たら是非、ご連絡を頂きたい。
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