迎えを待つ女の子
投稿者:有野優樹 (15)
中部地方の某県に住んでいたM美さん。
「小学校の卒業アルバムを見たとき、あの、あきらかに足がたりない子がいることに気がついて」
と話し出してくれた。
関係があるのかどうかわからないがその理由に一つ、心当たりがあったらしい。
話は小学生時代に遡る。
学校は歩いて行ける距離ではなかったので、母の運転する車で送り迎えをしてもらっていた。いつもなら十五時過ぎには車に乗れるのだが、その日は委員会をやらなければいけなかったので、友達と二人きり、残っていた。
同学年は十一人。女の子しかいない。同級生はもちろん、他の学年の人達もみんな知っている。委員会で一緒に残っていた子もよく喋る仲の良い友達だ。
夕方まで作業をしていて遅くなってしまったので、続きは明日にしようと帰りの準備を始めた。窓から外を見下ろすと、校門の前に母親の車があるのが見えた。
「ただいまー」
「遅かったねー」
「うん、委員会で遅くなって最後になっちゃった」
「ベランダに居た赤い服の子も?」
「そんな子居ないよ?私たちが最後だったから」
一緒に居た友達は赤い服なんて着ていなかった。
教室にそんな目立つ服を着ている子がいたらすぐにわかるはずだ。ベランダに出ていたのなら尚更。
赤い服の子、とは一体。
卒業も近づいてきたある日のこと。
みんなで手作りの卒業アルバムを作ることになった。校舎を背景にした同級生十一人と先生、合計十二人が映った集合写真を貼る。
このときには気づかなかったが、この思い出のアルバムは“怖い”ものになってしまう。
「卒業してからアルバムを見返していたとき、とある女の子の足がないことに気づいて。体はしっかり写っているんです」
「失礼ですが、その方はお怪我をされたりとか」
と聞くと
「いえ、健康に過ごしてますしちゃんと生きてます」
この写真はまだ実家にあるらしい。
学校は廃校になってしまったが、建物自体は存在する。時々実家に帰るがその学校の近くは通れない。
「幽霊が前を通ると遮られてしまうからなのか、向こう側が見えなくなってしまうというのを聞いたことがあったので、足が写ってなかったということは‥」
今は廃校になったその小学校で、赤い服の女の子はまだ、誰かの迎えを待ち続けているのかもしれない。
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