高橋さんの実家は東北地方の某県にある。
現在城はないが、実家はとある城の敷地内にあり、当時足軽が住んでいたと言われている場所に実家は建てられている。
城跡の周辺は石垣と外堀で囲まれており、春になるとお花見客で賑わう。憩いの場でもあるが、集団下校の際に外堀の脇に靴が綺麗に並べられていたり、桜の樹にロープがぶら下がっているのを見かけたことがあった。
いわゆる「そういう場所」だった。
高橋さんは小学二年生頃、そこを遊び場としていた。
靴が並べられている意味も、樹にロープがぶら下がっている意味も当時は理解していなかったので怖さはなかった。
とはいえ、あまり遠くまでは行けないので家の近くにある土手でよく遊んでいた。
ある日、いつものように土手で遊んでいた時のこと。
そこはススキがたくさん生えており、少し離れたところにはケヤキやクヌギなどの大きな木もあった。
ふと、地面に何かが落ちていることに気づく。
四角い穴の空いた丸い形の物、いわゆる古銭を拾った。一枚拾ったことに嬉しくなり探し回ったところ合計で三枚集まった。
家に帰り祖父に自慢すると
「それは古いお金だよ。すごいなぁ、あるもんなんだなぁ」
と感心してくれたので、それを学習机の一番上の引き出しにしまい後日また探しにいくことにした。
しかしそれからというもの、何度か古銭を探しに行ったが自分で見つけることはできなかった。
そんな中、とある異変に気づく。
引き出しの中にしまっていた古銭が、三枚から五枚に増えていたのだ。
不可思議ではあったが、家の側の土手で拾ってきた事を知った祖父が探してきてくれたのかもしれないと、何の疑いもなくその事実を受け入れることにした。
ある夜、玄関先で
「こんな夜中にどこに行ってるの!」
と母親にひどく叱られた。
ここからは高橋さんが母親から聞いた証言になる。
なぜ母親の証言に変わるのかというと、高橋さん自身に記憶がないからだ。
夜遅くに高橋さんが帰宅したので玄関先で説教をしていた。どこに行ってたんだという問いに対し
「おじさんのところだよ」
と答えたらしい。
もちろん、そんなおじさんに心当たりはない。
母親はサンダルを履きすぐに表に出たが、おじさんらしき人物を見つけることはできなかった。おじさんが誰かも気になるところではあるが、右手に何かを握っていることに気づく。
ひらくと古銭を一枚握っていた。
幽霊が憑依してたのかな?古銭にうっつていた昔の人の幽霊かな?
そのおじさんは誰なの???