奇々怪々 お知らせ

不思議体験

kwaidanさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

あの犬
短編 2024/11/18 09:07 210view

その時、鈴木さんの耳元で誰かが囁いた。

「お前もこちら側へ来い。あの花が咲いた時点で、お前の時間はもう終わった。」

振り返ると誰もいない。

ただ、拾ったはずの子犬の目だけが、地面からにじむように浮かび上がって鈴木さんを見ていた。

それ以来、鈴木さんの生活は完全に変わってしまった。

時間の感覚が失われ、電車や職場でたびたび「あの影」を目撃するようになったという。

ある日、部屋のサボテンが再び咲き乱れた朝、鈴木さんは誰にも何も告げずに姿を消した。

後に鈴木さんの部屋を訪れた同僚が見たのは、

異様に枯れ果てたサボテンと、冷蔵庫にこびりついた黒い手形だけだったそうだ。

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