あの犬
投稿者:kwaidan (15)
短編
2024/11/18
09:07
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その時、鈴木さんの耳元で誰かが囁いた。
「お前もこちら側へ来い。あの花が咲いた時点で、お前の時間はもう終わった。」
振り返ると誰もいない。
ただ、拾ったはずの子犬の目だけが、地面からにじむように浮かび上がって鈴木さんを見ていた。
それ以来、鈴木さんの生活は完全に変わってしまった。
時間の感覚が失われ、電車や職場でたびたび「あの影」を目撃するようになったという。
ある日、部屋のサボテンが再び咲き乱れた朝、鈴木さんは誰にも何も告げずに姿を消した。
後に鈴木さんの部屋を訪れた同僚が見たのは、
異様に枯れ果てたサボテンと、冷蔵庫にこびりついた黒い手形だけだったそうだ。
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