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呪い・祟り

kwaidanさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

白い門の家
短編 2024/10/05 07:51 325view

これは、会社の先輩から聞いた話だ。

その先輩とは、出身が同じ町だったこともあって、飲み会の席で地元の話題で盛り上がった。話の流れで「地元の怖い話をしようか」ということになり、自然と出てきたのが「白い門の家」の話だった。地元では古くから忌み地として知られていて、かつてその家で一家心中が起きたと言われていた。お坊さんが祓いに来たが、力及ばずに立ち去ったという話もあり、住む者がいなくなってからはずっと廃墟として放置されている家だった。

俺もその噂は知っていて、子供の頃に何度かその家の前を通り過ぎたことがあったが、家全体が板で覆われていて、内部は全く見えない状態だった。しかし、先輩が学生の頃の話によると、その頃は家はまだ完全に封鎖されておらず、窓ガラスも割れていて、内部に入ることができたらしい。実際、彼の同級生4人がその「白い門の家」に無断で入り込んだという。

翌日、その4人は学校で声を張り上げ、「床が抜けそうだった」「仏壇が壊れていて、扉には奇妙な刃物の傷があった」などと自慢げに話していたという。先輩は「そんな程度か」と特に気にも留めていなかったが、隣に座っていた友達が突然青ざめた顔で「無理」と呟き、席を立って教室を後にした。

その様子を不審に思った先輩は、友達について行くことにした。友達の家に着いてから、ようやく先輩は問いかけた。「どうしたの?」と尋ねると、友達は声を震わせてこう答えた。「私、霊感なんて無いと思ってたけど、あの4人全員、何か真っ黒な影に覆われているように見えたの…。それで、気分が悪くなって…」。

その言葉に、先輩は急に背筋が寒くなったという。怖くなり、先輩はそのまま友達の家に泊まることにした。しかし、次の日も学校を休んでいたところ、友達の家に学校から電話がかかってきた。先輩は、昨日サボったことで怒られるんじゃないかと思っていたが、状況は全く別だった。電話を切った友達の母親が、沈んだ声で言った。「昨日、あの4人が溺れたって。川に落ちて、そのまま助からなかったみたい…」。

先輩はその瞬間、凍りついたように固まった。その4人が亡くなったのは、町の外れにある沼で、かつては地元でも水難事故が多発していた場所だった。彼らは沼のそばで飲酒をして、足を滑らせたのだろうか。しかし、その後、何度か町で噂を聞くうちに、どうやら事故というにはあまりにも奇妙な点が多いことが分かってきた。地元の人々は口を閉ざし、「白い門の家」についても誰も話そうとはしなかった。

先輩は、その話が本当にあった出来事かどうか確かめるために、ネットで調べてみた。すると、やはりその年に4人の高校生が川で溺死したという事故の記録がはっきりと残っていた。まさに、先輩が高校生だった頃と一致していたのだ。

その話を聞いたとき、背筋に氷のような冷たさが走った。廃墟で何があったのか、何が彼らを沼へと誘い込んだのか。先輩はもうその答えを知ろうとはしなかった。ただ、あの家には今も何かが潜んでいるのかもしれないという思いだけが、静かに心に刻まれていた。

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