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不思議体験

kwaidanさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

無限ループの鬼戯
短編 2024/10/04 09:26 322view

これは、職場の同僚から聞いた話だ。

彼がまだ五歳の頃、悪夢に取り憑かれたという。それもただの悪夢ではない。目覚めても終わらない、幾重にも重なった恐怖の世界だったそうだ。

その夜、彼は突然目が覚めた。薄暗い部屋の天井から吊り下がった電球の光が、ぼんやりと部屋を照らしている。夢の中の恐怖から解放されたと安堵し、彼は息をついた。しかし、足元で何かが動いていることに気づく。ごそごそと音を立てるそれは、見知らぬ何かだった。恐る恐る上半身を起こすと、そこには「アイツ」がいたという。

年の頃は彼と同じくらいの子供。髪はボサボサで、目だけが異様に光っている。その姿は、まるで施餓鬼のようだったと彼は言う。もちろん、五歳の彼にそんなものを知る由もなく、大人になってからその姿が施餓鬼に似ていると気づいたらしい。そして、その妖怪のようなものは、右手に草刈り用の鎌を握りしめていた。

彼は恐怖で固まってしまった。体がまるで石のように動かない。まるで金縛りにあったようだったが、実際はただの恐怖によるものだという。アイツは彼の動けない様子を楽しむかのように、鎌を誇らしげに振りかざし、甲高い声で「ヒヒヒヒ」と笑った。

その瞬間、鎌が彼の足に振り下ろされる。スパッと音がして、彼の足は膝下から切り取られた。血は出ないが、赤い肉が見えたという。痛みはなかったが、彼は叫びたくても声が出ない。続けてもう一方の足も切り取られ、今度は腕が鎌で次々に斬り落とされていった。彼はまるでダルマのように、四肢をすべて失ってしまった。

だが、そこで目が覚めた。

夢だったのだ。やっと夢から覚めたのだと安心した彼。しかし、次の瞬間、再び足元で動く何かを感じた。そして彼は見てしまった。あの「アイツ」が、またそこにいたのだ。手に鎌を握り、再び彼の足を切り始めた。

夢が続いているのか?彼は再び目を覚ました。しかし、その度にまた同じ光景が繰り返される。何度目を覚ましても、悪夢は終わらない。「アイツ」が現れ、足を、腕を、次々と切り落とされていく。そしてまた目が覚める。幾重にも重なった夢の中で、彼は恐怖の無限ループに囚われていた。

その悪夢は一日で終わることはなかった。次の日も、また次の日も、まるで何かに念を押されるかのように、同じ夢が繰り返されたという。彼は次第に眠ることが怖くなり、夜中に目を覚ますことさえ恐怖に感じるようになった。

しかし、それだけではなかった。彼は次第に不安に襲われるようになったという。「いつか、本当にあの夢の通り、事故に遭い、身体障害者になるのではないか」と。彼はそう語る。何かに取り憑かれたかのように、黒い影の存在を感じることが増えていった。その影は、時に他人に憑依し、冷酷な行動を取らせることがあったという。彼は、人を信じることができなくなり、自分がいつ攻撃されるか分からないという疑心暗鬼の中で暮らすようになった。

彼は今でもその夢を思い出すたびに、現実と夢の境界が曖昧になるという。そしてふと考えることがある。「この世界が、実はまだ夢の中の一部なのではないか?」と。何層にも重なった夢の中で、彼は未だ囚われ続けているのかもしれない。

合わせ鏡から呼び出してしまったのは、本当に「アイツ」だったのだろうか?彼はそう思わずにはいられないと言っていた。

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コメント(1)
  • 睡眠薬お出ししますので、様子見ましょう(*´∀`)

    2024/10/06/12:20

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