子供が大人になるまでは

オレ…あと15年で死ぬ…

慌てたオレは藁にも縋る思いで、力があるという霊能者に相談しまくったよ
だけどいずれの霊能者からも、霊の力が強過ぎて払えませんと逃げられた

蝶子の墓参りで殺さないでとお願いしても、夢に現れて、必ず連れて行くと宣言された

オレはどうしても長生きしたかった
考えたあげく、あることに気がついたんだよ！
蝶子はお前の子供が大人になるまで…２０歳になるまで待つと言っていた
そうだった！良明が大人になるまでとは言っていないのだ！
良明が20歳になって蝶子が出てきても、新しい子供がいれば、オレを連れて行けないじゃんか！子供が19才以下である限り、生きられるって気がついたんだ

そこで明子に、新しい子供を産んでくれとお願いした

母も可愛い息子であるオレの為に、第二子をと、明子に頼み込んだのさ
その時の明子はオレと同じ30才、まだまだ産めるだろうと思ったんだ
だがプレッシャーがかかったせいか、なかなか妊娠しなかった
それでも不妊治療を受けてくれて、5年後、良明が10才の時に次男の明彦が生まれたんだ

だがここで手は抜けない
明彦が子供のまま亡くなるかもしれないし、3人目が生まれなければ、オレは後20年で死んでしまう

何とか3人目を作ろうと頑張ったが、なかなか上手く行かなかったんだ
またこの頃、母が宗教にハマってね
お布施で大金を払ってしまって、家の金が無くなっちゃったんだ
不妊治療にも金が掛かったし、オレと明子と2人で働いても、お互い薄給で家計は火の車だったんだ

それでも何とか頑張って、明子は5年後に三男の三彦（みつひこ）を産んでくれた

子供が増えた分、家計は更に大変になってね
三男は生まれたばかりだし、明子は産後の肥立が悪くて働けなくなったし、母はまたお布施で、今度は借金をしてしまったんだ
仕方なく、持ち家を売ってアパートに引っ越したよ

その時、長男の良明は中学3年生だった
勉強熱心で成績優秀だったんだけど、家族の為にと、高校を諦めて働いてくれたんだ
申し訳なかったよ
でも良明のお陰で、家計は大分 ましになったんだ

そしてあっという間に5年が過ぎて、良明も20才になった
その間に母も亡くなり、お布施の心配はなくなった
でも今度は明子が重い病気になってね、経済的には楽にはならなかった