高校生の浦田さんは生徒会に所属していた。
この日は来週に迫った文化祭の実行委員としての仕事をしており、生徒会室を出た時には陽はすっかり落ちており、自転車に乗って学校を出たのは夜8時を過ぎた頃だった。
いつもなら大通りから帰るのだが、この日はどうしても見たいテレビがあったので普段は通らない旧トンネルを通って帰ることにした。
この旧トンネルはかつては使われていたのだろうが、大通りが出来てからはすっかり使われなくなったそうだ。
だが、このトンネルを通った方が15分以上早く帰れる。
それでも普段使わないのは、このトンネルがいつも暗くて不気味な雰囲気だったからだ。
街灯もなく道幅も狭い上にトンネル自体がかなり長い、夜はもちろん昼間でも通りたくはなかった。
浦田さんが狭い道を自転車で進むといよいよ旧トンネルが姿を現した。
ぽっかりと開いた入口の先は完全な暗闇、トンネルが中で曲がっているのか出口側の灯りは一切入ってこない。
意を決した浦田さんは自転車で旧トンネルを進み始めた。
手入れをしていなかった自転車は、ペダルを漕ぐたびにキーコーキーコーと嫌な金属音を暗いトンネルの中に響かせた。
心なしかペダルも重く感じる、1秒でも早くトンネルを抜けたい浦田さんは重いペダルをひたすら漕ぎ続けた。
ところが、トンネルを進んでからすぐ異変に気がついた。
浦田さんの息づかい、ペダルを漕ぐたびに鳴る金属音、それに混じって人の足音が聞こえたのだ。
キーコーキーコー(カツッ…カツッ…)
キーコー(カツッ…カツッ…カツッ…)
キーコーキーコー(タッタッタッタッ)
キーコー(タタッ…タタッ…)
足音の鳴る感覚が早くなっている。
こんな夜、ほとんど誰も通らないトンネルで得体の知れない足音が響く。
浦田さんは背中に冷や汗をたらし恐怖で鳥肌がたっていた。
一体誰が?しかもこっちは全力で自転車を漕いでいるのに足音はどんどん近づいている。
浦田さんは全力でペダルを漕ぐが、足音はすぐ後ろで聞こえるほど近くなっていた。
息を切らせながら必死に自転車を進めていたが、今度は急に自転車が重くなったのを感じた。
まるで荷台に誰かがいて、二人乗りしているように感じた。
そう思った次の瞬間
『やっと追いついたよ、さあいこうか』
低い男の声を耳元で聞いてしまった。
浦田さんは自転車を放り出して全力で走ってトンネルを出たそうだが、パニックになっていてよく覚えていないそうです。
あのトンネルが使われなくなったのは、単に大通りが出来たからってだけではないと思う
浦田さんは少し身震いしながらそう語ったのだそうだ。























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