マキさんには、忘れられない友達がいる。
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マキさんは早くに両親を亡くし、親戚中たらい回しにされて苦労したそうだ。それでもどうにか高校までは出て、20代で地元を離れて上京した。
東京の下町で一人暮らしをしていたが、周りに友達がいなくて寂しかったという。
マキさんは日課として、出勤前にいつも近所の喫茶店で、モーニングを食べていた。
ある日、その店に若くて凄い美人のアルバイトが入ってきた。
レイナさんという名前で、一見するとキツイ顔立ちの美女だったが、とても気さくで優しかった。年齢を聞いたら自分と同じ25才だということが分かり、マキさんは嬉しくなった。
マキさんの周りには、勤めている会社の人を含め、自分と年の近い人は1人もいなかったからだ。
「遊ぶ相手がいなくて寂しい」
素直に言ったら、
「私で良ければ友達になりましょう」
と、レイナさんは言ってくれた。
その日のうちに飲みに行き、すっかり打ち解けた。
レイナさんは18才まで海外暮らしだったという。アメリカやヨーロッパなど、あちこちで暮らしていたらしい。また既婚者とのことだった。
それからも、2人は何度も会った。
レイナさんは同い年とは思えない程、知識が豊富で考え方が深かった。だからよく相談をさせてもらった。いつでも熱心にこちらの話を聞いてくれて、的確なアドバイスをしてくれるレイナさんを、マキさんは姉のようにも慕っていた。
マキさんは、レイナさんの旦那のケンさんにも会ったことがある。一つ年上で、こちらもかなりの美男子だった。
会ったのは2回、いずれも飲み屋でだ。1回目は3人で飲んだ時、2回目はケンさんの妹のリナさんも一緒に、4人で飲んだ時だ。
ケンさんリナさんの兄妹も、子供の頃は海外に長くいたと言って、話すと話題が豊富で楽しかった。
リナさんは一つ年下で、彼女もまた凄い美人で、こちらも既婚者だった。
その後はリナさんともよく会うようになった。
レイナさんもリナさんも、料理がとても上手だった。色々な地方の郷土料理や世界中の料理を知っていて、作り方をマキさんに教えてくれた。週に何回も、マキさんの家に来てくれたり、遊びにも行った。
2人が既婚者なので、少しは遠慮をしようとしたが、旦那とは毎日一緒にいるし、子供はいないから大丈夫だと押し切られた。
マキさんは2人の女友達に夢中だった。一緒にいると美人だから注目される。2人ともマキさんに凄く優しい。知らないことをたくさん教えてくれる。いつでもマキさんの行きたい所、やりたいことを優先してくれた。うっかり誰かに失言しても上手くフォローしてくれるし、会社の人の陰口を叩いた時は、やんわりと諭してくれた。まるで母のようでもあったという。
そんな2人は、自分にとって居心地の良い、理想の友達だった。
楽しいからこのままで良い、彼氏なんて必要ないと言い放った時、今思えば2人とも複雑な表情をしていたかもしれない、と後にマキさんは語っている。
だがそんな楽しい生活も4年で終わった。
マキさんが29才の時に、レイナさんたちがアメリカで仕事をすると言って、去って行ったのだ。2組の夫婦ともに、急に渡米が決まったらしい。
























世にも奇妙な物語にありそうな話
面白かったです
現代風八百比丘尼ですね
素敵な掌編でした