子供が大人になるまでは

そのまま元義父は倒れちゃったんだ
救急で病院に搬送されたけど、その日のうちに亡くなったんだ
オレが怒らせたのが原因だったのかもしれないね

それから1年後……ここから怖い話になるぞ

その日は蝶子の命日だった
良明は5才になっていて、家族5人で夕飯を食べていると、突然、見ていたテレビが真っ暗になったんだ
あれ、故障か？と思ったら、画面から蝶子の幽霊が出て来たんだよ
本当だよ！みんな見たんだ！
オレの父親は恐怖のあまり倒れたよ

『悔しい〜悔しい〜』
と言いながら、蝶子の幽霊は座っているオレたちの上空を、クルクル飛び回ったんだ

良明、明子、オレの母親、倒れている父親を順に睨みつけて、最後にオレを見た
そして、
『良彦〜 一緒に来い〜』
と言ってオレを掴んだんだ
あの世へ連れていかれる！と思ったオレは激しく抵抗したが、幽霊の力は強い
「待て待て待て…子供がいるんだ！まだ子供なのに父親を亡くしては可哀想だろっ」
そう言うと蝶子はピタっと止まった

オレは続けて言った
「そうだ子供だ、お前も子供がいただろう。同じ親じゃないか、この子は5才、まだまだ親が必要だ」
勿論、蝶子に子供はいない
だが彼女はあの日抱いていた人形を、未だに子供だと思い込んでいたようだ

残念そうな顔で、
『ぐぬぬ…悔しいが私も良子の母だ。仕方がない、お前の子供が大人になるまで待つとしよう。大人になるまで後15年、子供が20才になってからの私の命日に、必ずお前を連れていく』
そう言って消えた

ホッとしたのも束の間、その後が大変だった
母親も明子も恐怖のあまり腰を抜かしていたし、良明は漏らしたし、高齢の父親はショック死してた

慌ただしく父の葬儀が終わり、ちょっと落ち着いた頃、とんでもないことに気が付いた