十二単の女性

10年ほど前、私は東南アジアの某国に、友達と2人で旅行をした

その時に訪れたある場所で、日本の団体が『日本フェア』を開いていた
色んな日本の物が売られていて、売っている人たちも着物を着て、文化の紹介をやっている
異国の人たちが、我が国の文化を楽しんでいるのを見ると、私たちも嬉しくなった

さっそく参加してあれこれ見ていると、ワッという歓声が上がった

何だろうとそちらを見ると、1人の女性が十二単（じゅうにひとえ）を着て歩いている

日本人でも滅多に見られない十二単だ！
私も友達も、現地の人たちと一緒になって写真を撮った

その女性は40代くらいの小柄な人で、始終笑顔だった

※

それから10年ほど経った つい先日、その時の友達から連絡がきた

旅行の写真を見返したら、十二単の女性の顔が怖い顔に変化していたというのだ

実際に目で見た時も、帰国して写真を見た時も、女性に不可解なところはなかったはずだ

私も自分の写真を確認してみた

記憶の中では、十二単を着てニコニコと優しそうな人だなという印象であったが、改めて見ると般若のように、目がきつく切れ上がっている
表情も憎悪にみちて、とても怖い顔だった

この10年で、女性に何かあったのだろうか？