卒アル奇談
投稿者:Mine (24)
ちょうど夏だし今回は俺自身がガキの頃夏休み中に体験してしばらくトラウマになった出来事の話でもしようかな。
夏休みも半ばを過ぎ、その日は友人の家でずっと二人でゲームしていてさすがにマンネリしてきたから何か違うことしようぜって事になったんだけど、公園に行ってもする事なんか無いしお金だってせいぜい数百円しか持ってないから外に出たところで相変わらず退屈のまんまだ。
さてこれからどうしようと考えあぐねていると「ゴミ林いってみるか」と友人が提案してきた。ゴミ林は盲点だったから俺もそれは良い考えだと一も二も無く賛成して二人で自転車でゴミ林へと向かった。
ゴミ林っていうのは俺らが遊び場にしていた場所の一つで壊れた電化製品とか色んなパーツが無くなってボロボロになったバイクとか、とにかく雑多な物がたくさん捨てられていた雑木林のことなんだけど。
まさに不法投棄のメッカみたいな場所で、以前そこで大量のゲームソフトが捨てられているのを見つけたことがあって殆ど使い物にならなかったけど一つだけまだ起動できる物があった。それ以外にも結構綺麗な状態の漫画本とか百円玉なんかも落ちていたりするから俺たちはそれに味を占めてこれまでにもちょくちょく何度かゴミ林に宝探しに出向いていた。
そんなわけで二人で自転車を漕いで20分程、そろそろ夕方になろうという時刻にゴミ林に到着。
自転車は歩道に停めておいてゴミ林の中へは徒歩で進んでいく。
その日は曇っていたし木々の枝葉が光を遮ってくれるから真夏日でもゴミ林は薄暗くひんやりとしていて快適で過ごしやすかった。
何か見つけたら独り占めにしないで必ず報告すること、と取り決めを交わし俺たちはそれぞれ二手に分かれて探索を開始。
暫く一人で面白い物がないか周囲をうろつくも出てくるのは汚い軍手とか原型をとどめてない雑誌やら車のタイヤばかりでいい加減うんざりしていると
「おーい!なんかアルバムあったー!」と向こうから友人が俺を大声で呼びかけてきた。
アルバムってなんだよと思いながら友人のもとへ行くと手に持っている平べったい四角い物を俺の前に掲げて見せつけてきて、それでようやく卒業アルバムのことだと分かった。
あそこで見つけた、と友人が指さした一角は古着とか空き缶が散乱している場所でそこに埋もれるように捨てられていたそうだ。
表紙に〈輝く未来〉とかそんな感じのタイトルがあって中学校名も記載されてたけどどこの中学かはちゃんと確認してないから分からない。多分市内のどっかの中学だろうとは思うが。
平成6年度という表記があったのは覚えている。
長い間野ざらしにされていたようでだいぶ日焼けして痛んでいるし汚れも目立つが見られないほどでは無い。
で、俺たちは早速その場にしゃがみ込んでページをめくり始めたんだよね。
「この人アイツに似てる!」とか「この人髪型ヤバいだろww」とか好き放題言いながら生徒の写真を見ていくのは結構楽しかったな。
ページ同士がくっついて開かない箇所も器用にベリベリと剥がしていったりして。
そんな風に読み進めていって最後の3年5組のクラスのページを開いた時だ。
俺たちの周囲の空気が一変したのをはっきり感じたな。
そのクラスは担任を含めた全員の顔写真の上部分にカタカナの「ハ」の字の形に、黒い帯のような物が2本、ボールペンで書き込まれてたんだよ。
「・・・これ、遺影だ・・・」
隣で友人がぼそっと呟いた。
全員とは言ったがただ一人だけ何も書き込みがされていない女生徒がいて、ほかの生徒が笑顔やおどけた顔で写っている中、その女生徒は一人だけ殆ど無表情で伏し目がちに写っている。
さっきまであんなにはしゃいでいたのにこの異様な光景を目にして俺たちは黙り込んでしまった。
興醒めし、冗談も言えないような何か言い知れぬ嫌な空気が辺りを取り巻いていた。
そのクラスにはそれ以上何もコメントはせずに気まずい雰囲気の中、アルバムを進めていく。
残りは修学旅行や部活動の様子を撮影した何の変哲も無いスナップ写真が並んでた。
そして最後の、普通なら寄せ書きが書き込まれているスペースを開いてみると寄せ書きは一つも無くて、その代わりになんか絵が描かれていた。
いかにも女子が書いた少女漫画といった感じの絵柄で、女の子がこちらを向いて笑顔で手を振っている構図のイラスト。
顔の隣にフキダシがあって
〈毎日つらいです。お父さん お母さん ごめんネ ずっと大好きだよ〉
と台詞が書き込まれている。
実は女の子は生きてて、自力で何処かに行ってしまったんだな