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ヒトコワ

Mineさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

にぎやかな4人組
長編 2025/02/05 23:47 111view

私が中学生の頃だからもう30年も前、平成の初め頃になりますね。
当時はスマホなんてないしインターネットだってまだまだ一般的でない時代で、更に私の地元は辺鄙な田舎なもんだからろくな娯楽だってない環境でした。
今の子からすればさぞかし退屈に思えるでしょうけど、でも私にはいつも一緒に過ごす3人の友人達がいて毎日がそれは楽しかったんですよ。
気の置けない友人というのはなによりの宝物なんです。
私とカオリとミキとキョーコ。常に同じメンバーで行動してたものだからで地元ではちょっと有名な仲良し4人組で知られてたんですよね。
皆お揃いの小物を持ってたし全員同じ高校に行こうって決めていて、大人になってもこの4人で集まれたらいいね、なんて言ったりして。
まぁ、結論から言えばそれは叶いませんでしたけどね。

さて前置きはこれくらいにして話を進めましょうか。ちなみに人名は全て仮名です。

全ての始まりは中2の夏も過ぎ、外の空気に秋の気配を感じ始めた頃の事でした。
私が遅刻ギリギリに登校すると教室中がやけにざわついていました。
先に来ていたカオリとミキに理由を聞くと昨日の放課後、キョーコが学校の屋上から転落して病院に搬送されたというじゃないですか。

「それで、キョーコは大丈夫なの?」仰天して私が問うてもそれ以上の事情を知らない2人は首を振るばかり。それは他のクラスメイトも同様でしたがホームルームの最後に担任から詳しい話がありました。
キョーコは現在意識不明だということ。現場の状況から老朽化したフェンスにもたれてしまいフェンスが破損しそれで転落してしまったようだ、ということでした。
キョーコは面会謝絶でしたが数日後、私たち3人は特別にお見舞いに行くことを許されました。
あんなに元気だったのに頭に包帯とネットを被り、人工呼吸器や色々なチューブに繋がれ変わり果てたキョーコの姿を見た時の衝撃、悲しみは言葉で言い表せるものではありません。それはカオリとミキも同じで、私たち3人は横たわるキョーコにかける言葉も無くただ見つめているばかりでした。
「キョーコが元気になったらさ、4人でお祝いとかしようよ」
病院からの帰り道、私はカオリとミキにそんな気休めを言ったのを覚えています。
キョーコならきっと大丈夫、大丈夫・・・そう仲間内で言い合いながら1週間2週間と過ぎていったある日のことです。事態は予想外の方向に急展開しました。
入院中のキョーコの机を整理していた担任がなんと、遺書を発見したのです。
内容はもちろん公にはされませんでしたがキョーコはずっとイジメられていたこと、そしてイジメていた人物の名前も遺書には書かれていたようでそれがなんと私たち4人組の一人、ミキだったようです。このことはミキだけ何度も校長室に呼び出されていたことやそこかしこから嫌でも耳に入ってくる噂話で知りました。
とにかく、単なる転落事故から飛び降り自殺事件へと状況は180度変わったのです。
私は混乱の極みにおりました。ミキは人一倍正義感が強くイジメを止めこそすれ、イジメをするような子ではありません。メンバー内で何か揉め事が起きそうになった時いつも仲裁に入り、場を和らげてくれていたのは彼女の役割でした。私達同じグループのキョーコをターゲットにするなんて考えられません。だって私たちはずっと身近にいて見てるんですから。キョーコとミキの間に何もやましいことは無いんだってことを。

カオリも私と同意見で「ミキがそんなことするなんてありえない」と私と一緒に担任にそのことを訴えました。
それとも・・・やはり人間というのは良い面だけでは無く裏の顔があってミキはそれを巧妙に隠し続けて私たちを欺いていたのでしょうか。時折、そんな暗い考えが頭をかすめました。
今回の件で緊急の全校集会が開かれ、更には保護者会まで開催される事態に発展しました。
最初に言ったとおり私の地元は人口の少ない田舎町です。ミキがキョーコをいじめて自殺に追い込んだらしいという噂はあっという間に地域中に広まってしまいました。
──あそこの家の子は人殺しだぞ。
──そんなことする子だったなんて、怖いわぁ。
ミキは何かの間違いだと必死に周りに訴えていましたが私とカオリ以外に耳を貸す者はおらず、学校では完全にハブられて孤立してしまいました。
遺書という絶対的な証拠がある以上はそれも仕方ないのかもしれません。
全ては当事者であるキョーコの口からの真相の説明にかかっているのですが彼女はあれからずっと目を覚まさずそして季節は冬になろうという時、とうとう最悪の事態を迎えました。結局彼女は意識を取り戻す事無くそのまま旅立ってしまったのです。
告別式に参列したのは私とカオリだけでした。遺影の中の屈託の無い笑顔を浮かべるキョーコを見て二人とも止めどなく涙を流したのは言うまでもありません。
ミキはといえばその頃には人前に顔を見せなくなり、程なくしていじめっ子の汚名を着せられたままミキ達一家は別の土地へと逃げるように引っ越していきそれっきり、彼女の姿を見ることはありませんでした。
こうして私たちグループはこの短い間にキョーコとミキの二人を失いました。

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