バラバラの亜里砂さん
投稿者:Mine (25)
ある土曜日の早朝、塚本順一はその日目覚ましがアラームを鳴らす前に目を覚ました。
時刻は6時を少し過ぎた頃。いつもならぐっすり眠っている時間だ。
再び眠ろうと布団を被り目を閉じるもどうにも寝付けず何度も寝返りを打つ。
しばらくそうしていたが結局睡眠は諦め身を起こし、洗面台へと向かい顔を洗う。
その顔はひどい有様だ。虚ろな目には隈ができ、顔色も悪い。大きな悩みを抱えた者特有のくたびれきった表情。睡眠が取れないのも無理はない。今の塚本はまさしく難題を抱えており安眠どころではないのだ。
コーヒーと簡単な朝食を取りながらしばらく心ここにあらずの眼差しでぼんやりテレビを眺めているとようやくアラームが鳴り響く。
8時10分。
塚本は部屋着から外出用の服に着替え寝癖を少し直しただけで一人暮らしのアパートを出た。駐車場に停めてある自分の車に乗り込み乱暴に発進させる。
ハンドルを握ること1時間弱、辿り着いたのは遠く離れた郊外の大型ホームセンターだ。
店内に入るとまず包丁売り場へ向かい、そこで十分吟味し見繕った8本をかごへ入れ次に園芸コーナーへ行き鉈を2本選んだ。今度はDIYコーナーで鋸を6本選ぶと最後に大きめのサイズの黒いゴミ袋を手にしてレジに向かいさっさと精算を済ませ車へと戻った。
それからどこにも寄り道せずにまっすぐ自宅へと帰り着く。
部屋に戻ると購入した道具をテーブルに投げ出してソファにどさりと腰を下ろし、そしておもむろにスマホを取り出すとどこかへ電話をかけた。
「あ、俺だけど。今大丈夫?・・・うん。今日俺んちこれる?・・・うん・・・うん、16時?もう少し早くは無理?・・・うん、うん。わかった。あと汚れてもいい服で来て。絶対。それと着替えも持ってな。うん、いいからとにかく。じゃ待ってるから」
通話が終わると大きな溜息をついて横になりそのまま目を閉じた。
眠っているのではなく眉間にしわを寄せ何事かを思案している険しい顔。
27歳。新卒入社の会社で順調にキャリアを積み上げていた塚本にとって今回直面した出来事は過去に経験した事の無い一大事だ。下手を打てば文字通り破滅が待っている。
どんな手を使ってでもどうにかしないといけない。そんな決意を全身に漲らせていた。
1時間以上そうしてソファの上で悶々と過ごした後、今度はテレビを付けたり消したり、かと思えば意味も無く部屋をうろうろ歩き回ったりと情緒不安定に陥ったような行動を取り始めた。落ち着かないまま15時を少しすぎた頃、インターホンが鳴った。
「おうシホ。ごめんな。いきなり無理言って」
招き入れられたシホはセミロングの髪を手ぐしで整えながら部屋へ上がった。
173㎝の塚本の丁度顎辺りに頭が来る位の、黒目がちでどこか小動物を思わせる女性だ。
「言われたとおりいらない服で来たけどぉ~・・・で、どしたの今日」
塚本は無表情に答えた。
「バレたよ俺らの事。亜里砂に。」
「えっ・・・」
シホの顔からも同じように表情が消える。
「うそでしょ?どーすんの?」
塚本は答えずバスルームに向かい、ついてこいと仕草だけでシホに合図する。
そしてバスルームでシホが目にしたのは、倒れている一人の女性の姿だった。
ヒッ、と短い悲鳴を出す。塚本は淡々と語り始めた。
かなり引き込まれる、いい(怖い)話でした。
流石に死体をバラバラにする様子は見てて気持ち悪いでしょうね😅