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Mineさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

誘拐されたA君
短編 2024/09/01 16:05 1,615view
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怖かったけどそれ以上に意味不明だったよ、と知人の坂口さんは語り始めた。

坂口さんはテレビを付けたまま寝落ちしてしまう習慣がかつてあったという。

その日も部屋の明かりを消しテレビだけを付けた状態でウトウトと寝入ってしまった。
途中で目を覚まし、時計を見ると深夜の3時頃。付いているテレビを消そうと身体を起こし画面に視線を向けるとニュース番組が流れている。

初めて見る顔の女性アナウンサーが淡々とした声と乏しい表情で子供が行方不明になった事件のニュースを読み上げていた。
人名はフルネームで出ていたそうだが坂口さんの記憶が曖昧な為、仮にA君としておく。

『昨日夕方、両親と公園で遊んでいたA君(5才)が行方不明となりました。遊具で遊んでいたA君を両親が数分程目を離したところ、姿が見えなくなっていたということです。家族は警察に通報しましたが依然見つかっておりません。公園付近の住宅地でA君の特徴とよく似た男児を連れている10代後半から20代前半の若い男性の目撃情報もあり、警察は誘拐も視野に入れて捜索を進めています』

画面はしばらく現場となった公園の映像が映し出された後またスタジオに戻りアナウンサーは一礼してそこでニュースは終わった。
あれ?こんな時間にニュース?
坂口さんが違和感を抱いたと同時にテレビの映像は放送休止のカラーバーに変わった。

坂口さんはそれ以上深く考えずに再び眠りに就いた。

後日、酒を飲みながらまどろみ、いつものようにテレビを付けたまま眠ってしまい坂口さんが目を覚ましたのはやはり深夜の3時頃。
またやっちゃったよ…とぼんやりテレビに目を向けるとあの時と同じ女性アナウンサーが一礼しニュースを読み上げるところだった。

『行方不明になったA君(5才)とみられる遺体が現場の公園から10キロ程離れた山中でみつかりました。検死の結果死因は窒息死とみられ首には絞められたような跡があり、警察は殺人事件に切り替え捜査を続けています』

現場の山中で捜査員が慌しく動いてる様子を上空から撮影した映像が暫く流れた後、画面はA君の父親が泣きじゃくりながらインタビューを受けている所に切り替わった。父親は首から下だけで顔は写っていない。

『本当に、ウッウッどうか無事でいてくれと何度も、祈って、ましたが、ヒッヒッまさか、こんな、こんな結果になるなんて本当、ウウウ、悔しくて悔しくて・・・うわああ』

画面がまた切り替わる。
A君とみられる遺体の、紫色に変色した顔写真がアップで映し出された。
一気に酔いが覚め坂口さんは混乱した。

いくら深夜とはいえこんな遺体の写真をテレビで流してもいいのか・・・?

それから映像は再びスタジオに戻った。
・・・が、明らかに様子がおかしい。
照明が落とされ、アナウンサーの姿もない。
薄暗く誰もいない無人のスタジオの映像を坂口さんが呆けながら眺めていると。
ガタッ、と背後の押し入れから音がした。
振り返ると押し入れのふすまがゆっくりと横に動いている。
そのまま隙間が数㎝開くとそこから幼児のものらしき小さな紫色の手がふすまの端をつかんでいるのが見えた。
坂口さんは弾かれたように立ち上がり着の身着のまま部屋を飛び出すと近所の公園まで走った。

なんだよ、なんだよアレは。

部屋に戻ることもできず結局ベンチでまんじりともせず夜を明かしたそう。
日が昇り人々が活動を始める時刻になってようやく坂口さんは恐怖心が薄れて部屋へ戻ることができた。
押し入れの中には誰もいなかったが、ほんの微かに線香の匂いが鼻をついた。

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