友達が送ってきた廃墟巡りの動画
投稿者:N (13)
廊下からは僅かに日差しが入り込んでいるのだが、入り込むのは光だけではなかった。
逆光でくっきりと浮き上がった人の頭が、縦長の入口の枠のあらゆる角度から覗き込んでいた。
足元から天井まで、頭部のシルエットが部屋の中に居る俺とAを覗いていた。
「わわわッ…」
隣から震えて声にならないのか、Aのうめき声のようなものが聞こえた。
俺も叫びたい一心だったが、喉が締まっているのかように声が出せなかった。
それでも力いっぱい腕に力を込めて隣にいるAの腕を引っ張ろうと思った。
特にそれで何が出来るとか、何も算段は無いが、無我夢中でAに縋ろうと思っていたのかもしれない。
虫以外は平気なんだろ?A。
そう思って震えながらカクカクと隣のAに振り向くと、そこには知らない顔があった。
一瞬、顔かどうか分からなかったが、数秒でそれがさかさまになった顔だと分かった。
長い髪を床いっぱいに垂らした老婆のような顔立ちだった。
どこからその顔が出てきたのかと首を辿れば、押し入れの中の天井裏から上半身を乗り出すようにして、俺とAの間、ちょうど俺たちの顔の高さに位置する場所に顔を忍ばせていた。
俺がその顔に気づくと、どうやらAもこっちを見ていたのか、今度こそ悲鳴を上げた。
「「うわああああッ!?」」
それと同時に何故かこの部屋の襖が閉じられて一気に視界が暗転する。
俺たちはパニックになった。
「明かり!つけろって!」
「うわああッ!おわッ!?」
Aの怒声に近い声に従ってライトで部屋中を照らすが、照らす場所全てに人影が佇んでた。
正面を照らせば背丈の疎らな人影が数人立ってるし、横を照らせば壁側にも数人の人影が立っている。
Aを照らせばAの背後にも数人の人影が立ってるし、押し入れを向けばあの老婆が天井からさかさまにぶら下がってこっちを見ていた。
あー、もう駄目だ、漏らす。
そう思った刹那、突然誰かが目隠しをするような手のひらのシルエットが視界を包み込み、俺の目を抑える。
「やめッ…!ヒっ…!」
実は幽霊ではなく、怖い輩の人達だった?
咄嗟に思ったのは、裏社会の人間に連れ去られるのではという恐怖だった。
とにかく、幽霊なのか怖い人達なのか、俺にはどっちなのかも分からないし、どっちでも怖いのは間違いないので慌てふためいていた。
ああ、俺の人生ここで終わる。
そんな事を思っていると、遠くから「おーい!〇〇?A?」というBの声が聞こえた。
大作ですな
読みやすくて一気読みでした
12ページもあったから読むか迷ったけど読んでよかった
夜中に一気読み!面白かった!
想像してただけで心臓が早く波打つのがわかった。
長いのもあってか結構怖かったわ(笑)