バスから降りたら知らない町だった
投稿者:すもも (10)
「うぎゃあ」
短い悲鳴と共に鉈が男性の頭をかち割ったシルエットが見えました。
何かが飛び散ると、鉈は再び振り上げられ、もう一度『ゴシャッ』と男性に叩きつけられました。
時折照らされる火の明かりが陽炎のようにその光景を淡くちらつかせると、鉈を持った人が今度は私の前に立ちはだかり、大仰に振り被り、私の肩に折り降ろしました。
「ぎゃああああ」
これまで生きてきて感じたことのない痛みに襲われました。
喉が引き裂かれる程の悲鳴が出ました。
一瞬で死ぬと思いました。
しかし、私は生きていて、薄っすらと目を開けると再び鉈を振り上げた鬼のお面を被った人と目が合い、数舜の沈黙の後、もう一度、今度は私の顔面に向かって鉈は振り下ろされたのです。
死んだ。
痛い。
いやだやだやだやだやだやだ。
こんな意味の分からない死に方は嫌だ。
そう心の中で叫び、突然の死を覚悟していると、不思議と次の痛みはありませんでした。
そればかりか、心地良い揺り篭に揺られているような安らいだ気持ちになっていて、睡魔が襲ってくるのです。
これが死後の世界?または天国なの?そんな思いが巡る中、私は自分の瞼が動く事を直感し、この心地良い浮遊感から目覚めるように目を開けました。
『次は〇〇です。次、停まります』
聞き慣れた運転手のアナウンス。
独特の車内の匂い。
安定したエンジン音。
座席から伝わる心地良い振動。
私はバスの中にいました。
途端に意識がはっきりとして慌てて車内を見渡すと、数十人と乗客がいました。
二人掛けシートの窓際に座る私の隣にはOL風のお姉さんがウトウトとしており、窓辺から外を見れば、発展した見慣れた街並みが広がっていました。
日が高いので昼時でしょうか。
私は車内の電光掲示板に目をやると、表示される次の停車駅は私が居眠りする前に見た駅から八つほど進んだ駅名でした。
あれ?私は殺されたんじゃ?
もう夜じゃ?あの集団は?
おばあさんと男性はどうなったの?
あれ?
読み応えがあり引き込まれました。とても文才がおありと存じます。
眠りがスイッチになって、不思議な世界が同時間軸に存在しているのかも?という好奇心が刺激されました。
電車やバスなど交通手段で意図せず異世界に移動してしまったお話は、きさらぎ駅同様、とても興味深いです。
きさらぎ駅と同じ太鼓の音。
3人とも無事に帰還され良かったです。
こういう話わくわくするね
おばあさんは平屋で待っていて、無事だったのか気になる…
これ映画の「きさらぎ駅」と、ほぼストーリー同じじゃない?
単に電車がバスになっただけで。
きさらぎ駅と違ってハッピーエンドで良かったじゃん
その場所、何か曰くみたいなモノがあったりするのかな? それで白昼夢みたいなものを偶々、寝ていた三人が魅せられたみたいな事なのかな、と思ってね。 なんか、現代回顧版みたいな話しだよな〜。
展開に無理がなく、情景が浮かんできます。
おいおい、運転手に聞けよ。ってか、一番怪しいじゃん。
引き込まれました。どういう展開、どういう結末なんだろう・・・と。読んでいてここまでドキドキするのは私としては珍しく、久々に良質の怖い話を読ませて頂きました。ありがとうございました。
とても面白かったです
やっぱ異世界があるとしてもこんな感じに似てるけど常識が全く通じない異様な場所なのかな
あんななろう系のファンタジー系じゃなく
面白かった。
唯一思うのはその状況だったら最後3人で大騒ぎするでしょ
そそくさと降りるかなぁ
おっさんの意図が気になるな
最初は危害を加えようとしてるのかと思ったけど、村民達は三人が来てる事を聞いてなかったっぽいし眠らせて家から出ないようにする事で夜現れる村民達と遭遇させないよう守ろうとした可能性もある…のか?