洗面器
投稿者:すもも (10)
小学生の時の奇妙な体験をしました。
当時、私はまだ祖母と一緒にお風呂に入っていたのですが、来年には三年生になるので一人で入れるようになれと、母に言われ一人で入浴する練習していました。
私としてはお泊まりがある行事などは大体友達と一所に入るので困ったりしていませんでしたが、母に言われるまま今晩も一人浴室にやってきます。
季節は梅雨明けの少し蒸し暑さが出てきた頃でした。
ほどよい湯船の熱気で浴室は温まっていたので裸でもそんなに寒さはなく、私は洗い場で先に体から洗っていました。
何も考えることがない空間で一人、ただ体を洗う単純作業。
こういうときは不思議と怖い想像が頭を過るものでして、私もテレビ番組で見た心霊コーナーを思い出し、身震いしていました。
しかも、厄介なのが一度思い出せばその映像が脳内でリピートされる、怖がりな子供特有の現象です。
一人の時に限って想像してしまう最悪なパターンに、私は怖くなって早めに体を洗い湯船に浸かってさっさと出ようと急ぎます。
お湯を張った洗面器を頭からかぶり、次はシャンプーをこねて頭を洗います。
私は、一人でお風呂に入るのはまだ不馴れですが、シャンプーハットなしでも大丈夫な子です。
多少乱暴に髪を泡立ててから蛇口を捻り洗面器にお湯を張る間、その洗面器にお湯が溜まっていく様をじっと見つめていました。
ジョボジョボ
この音が耳心地よく、いつの間にか恐怖感も薄れており、私は鼻唄まじりに頭を揺らします。
すると、洗面器の水面に私の影が写り込んでいるのに気づき、小さく左右に頭を振る姿がおかしくて少し笑ってしまいました。
お湯が溜まり蛇口を止めると、水面の波紋が静まり私の姿がよりハッキリと見えるようになり、泡だらけの頭髪に目がいきました。
「ん?」
ただ、何か違和感があったのです。
ちょうど頭頂部のあたりから、何か別の塊が見え隠れしているのです。
私が少し頭を下げると、その塊がにゅっと姿を露見することになり、私はそれを見て絶句しました。
黒くぼやけたおかっぱ頭をした性別不明の人の顔が水面の反射越しに私を見ていたのです。。
「きゃあああああ!」
私は悲鳴を上げて浴室のドアをこじあけ、すぐに助けを呼びました。
「おかああさあああん!」
「どうしたの!?」
すぐに母が脱衣場に駆け込んで来てくれて、私は裸のまま母にしがみつき、震える手で浴室を指差しました。
母は浴室の中をくまなく見渡しますが、何もないことで怪訝な顔で私に向き直り、
「何があったの?」
と目線を揃えて聞いてくれましたが、私は「人がいた」とか「後ろから見てた」とか、動揺して泣きながら訴えかけるだけで、母は困った様子で私をあやしてくれました。
そのあともすぐに父がやってきて念のため外に出て庭周りを確認してくれたのですが、勿論誰もいなかったと聞きます。
お風呂から出て体拭いてたら風呂場からまたねって声かけられたことあって、怖いイメージがある…
いつもシャンプーは早めにきりあげます。真っ暗な瞬間がいやですね。