僧伽(サンガ)
投稿者:四川獅門 (33)
2人は目的地に着いた。
そこは長らく絶縁していた両親がいる、紀子さんの実家だった。
他に頼れる者がいないため、苦渋の決断だった。
県内の実家に身を寄せた紀子さんは、
調停離婚 (裁判所から選出された委員を仲介し、当事者同士が会わない方法)
の手続きを進めた。
両親の反対を押し切り、半ば駆け落ちをする形で両親と縁を切った紀子さんは、気まずい思いで日々を過ごした。
2ヶ月後、調停が成立した。
子供の親権は紀子さんが持ち、元夫と子供の面会は、子供の合意がない限り不能。
養育費は月4万円、等の条件だった。
「パパに会いたい?」
そう紀子さんが聞く度に、新一君は俯いて首を横に振った。
紀子さんの苗字は旧姓の「桐島」となった。
通常は離婚をしても子供の苗字は変わらないが、新一君の要望により紀子さんは手続きを踏んだ。
こうして桐島紀子とその息子、桐島新一は、県内の古いアパートに引っ越した。
そこは紀子さんの職場と、新一君の小学校の近くに位置する場所だった。
紀子さんと新一君は100円ショップで材料を買い、2人で表札を作った。
[ きりしま ]
完成した手作りの表札を見て2人は笑った。
紀子さんは久しぶりに新一君の笑顔を見た。紀子さんも久しぶりに大笑いした。
フルタイムで働く紀子さんは、新一君に鍵を預けた。所謂鍵っ子だ。
仕事で遅くなる日は朝食と一緒に夕食を作り、冷蔵庫に入れてから仕事へ行った。
「今日はママ遅くなるから、ご飯はチンして食べててね」
「うん!いってきまーす!」
新一君は日に日に笑顔が増えていき、紀子さんは内心ほっとしていた。
引越して3ヶ月ほど経ったある夜、2人は寝床についていた。
すると、新一君が寝言を言った。
七面山ということは日蓮宗か。
私も坊さんやっておるけども(日蓮宗ではない)、こういう話は身の回りで聞くことがある。
この手の話は仏教の教義柄、対外的には公言されないけども、お寺の世界なら、このエピソードは実話でもおかしくないくらい有り得る話。
1番上のコメント主様へ。
お坊さんが、このような話を読まれている事に少し驚きました。お読み頂いてありがとうございます。
七面山が日蓮宗というのも、書いた私自身、知りませんでした。大変勉強になりました。
先日、宗教は違うのですが、加持祈祷に救われました。
神や、仏につかえる方々には感謝や尊敬の意があります。
この場を借りて、お礼申し上げます。
する夫