僧伽(サンガ)
投稿者:四川獅門 (33)
「……ママ……怖いよ……」
紀子さんは胸が締め付けられた。息子も元気な顔を取り繕っているのかもしれない。そう思った。
彼女は新一君の頭をそっと撫でた。
窓からは夏の夜風が入り込む。
どこからか、線香の香りがした。
ある日の夕方、紀子さんが職場から外に出ると雨が降っていた。
紀子さんがアパートに帰ると、コンクリの玄関には雨に濡れた2人の足跡があった。
ひとつは新一君の足跡、
もうひとつは、靴が無い。
「ただいまー」
「おかえりなさい!」
新一君が玄関まで駆けてくる。
「新ちゃん、誰か来てたの?」
紀子さんが聞く。
「うん!ユキちゃん!」
満面の笑みで新一君が答えた。
「えー?もしかして新ちゃんのカノジョー?」
紀子さんがからかう。
「うーん……トモダチー!」
2人は笑った。無口だった息子にも友達ができて、紀子さんは内心ほっとした。
次の日、仕事で遅くなった紀子さんがアパートについたのは20時頃だった。
新一君は風呂から上がり、テレビを見ていた。
紀子さんが冷蔵庫を開けると、新一君の夕食がそのまま入っている。
「新ちゃん、どうしてご飯食べてないの?」
「ユキちゃんとお菓子食べてお腹いっぱいになっちゃった。ごめんなさい」
「もう……ダメでしょ。ちゃんとご飯食べなきゃ、ママ怒るよ。今度ユキちゃんにお礼しなきゃね」
「うん!」
結局、新一君の夕飯は紀子さんが食べた。
食事を終えて、紀子さんは同僚に貰った入浴剤を風呂に入れた。
『最近急に痩せて心配だわ。身体、労わってね』
七面山ということは日蓮宗か。
私も坊さんやっておるけども(日蓮宗ではない)、こういう話は身の回りで聞くことがある。
この手の話は仏教の教義柄、対外的には公言されないけども、お寺の世界なら、このエピソードは実話でもおかしくないくらい有り得る話。
1番上のコメント主様へ。
お坊さんが、このような話を読まれている事に少し驚きました。お読み頂いてありがとうございます。
七面山が日蓮宗というのも、書いた私自身、知りませんでした。大変勉強になりました。
先日、宗教は違うのですが、加持祈祷に救われました。
神や、仏につかえる方々には感謝や尊敬の意があります。
この場を借りて、お礼申し上げます。
する夫