「……ママ……怖いよ……」
紀子さんは胸が締め付けられた。息子も元気な顔を取り繕っているのかもしれない。そう思った。
彼女は新一君の頭をそっと撫でた。
窓からは夏の夜風が入り込む。
どこからか、線香の香りがした。
ある日の夕方、紀子さんが職場から外に出ると雨が降っていた。
紀子さんがアパートに帰ると、コンクリの玄関には雨に濡れた2人の足跡があった。
ひとつは新一君の足跡、
もうひとつは、靴が無い。
「ただいまー」
「おかえりなさい!」
新一君が玄関まで駆けてくる。
「新ちゃん、誰か来てたの?」
紀子さんが聞く。
「うん!ユキちゃん!」
満面の笑みで新一君が答えた。
「えー?もしかして新ちゃんのカノジョー?」
紀子さんがからかう。
「うーん……トモダチー!」
2人は笑った。無口だった息子にも友達ができて、紀子さんは内心ほっとした。
次の日、仕事で遅くなった紀子さんがアパートについたのは20時頃だった。
新一君は風呂から上がり、テレビを見ていた。
紀子さんが冷蔵庫を開けると、新一君の夕食がそのまま入っている。
「新ちゃん、どうしてご飯食べてないの?」
「ユキちゃんとお菓子食べてお腹いっぱいになっちゃった。ごめんなさい」
「もう……ダメでしょ。ちゃんとご飯食べなきゃ、ママ怒るよ。今度ユキちゃんにお礼しなきゃね」
「うん!」
結局、新一君の夕飯は紀子さんが食べた。
食事を終えて、紀子さんは同僚に貰った入浴剤を風呂に入れた。
『最近急に痩せて心配だわ。身体、労わってね』

























七面山ということは日蓮宗か。
私も坊さんやっておるけども(日蓮宗ではない)、こういう話は身の回りで聞くことがある。
この手の話は仏教の教義柄、対外的には公言されないけども、お寺の世界なら、このエピソードは実話でもおかしくないくらい有り得る話。
1番上のコメント主様へ。
お坊さんが、このような話を読まれている事に少し驚きました。お読み頂いてありがとうございます。
七面山が日蓮宗というのも、書いた私自身、知りませんでした。大変勉強になりました。
先日、宗教は違うのですが、加持祈祷に救われました。
神や、仏につかえる方々には感謝や尊敬の意があります。
この場を借りて、お礼申し上げます。
する夫