ついに自分が標的になった。
小学校中学校を通じて、いじめは回避してきた。
目立たないように、相手に不快感を与えないように振る舞った。
話は合わせたし、趣味もメジャーなものにした。
お陰で、今までの立ち位置は、いつも中立かいじめる側だった。
それがどうだ。教室に入って来た時、誰も私に挨拶をしなかった。
きっかけは分からない。
今までいじめの標的になっていた子が、自殺だかなんだかで学校に来なくなったからかも知れない。
席につく。
教室は静まりかえっている。
誰も私に話しかけない。
孤独感。
スマホの着信音も鳴らない。
先生がやって来た。
喋り始めた。
あれ?
――診断は、突発性難聴だった。
1週間ほどの入院の末、聴力は回復した。
話しかけられても気付かない訳だ。
待って。
じゃあ、私は友達に声をかけられたのに無視したって事にならない?
スマホを見る。
メッセージが19件溜まっていた。
全部あの日の日付だ。
『どうしたの? 機嫌悪い?』
問いかけから始まって。
『ああ、そういう態度取るなら、こっちも分かった』
まで大体3件。
知ってる。
こういうパターン知ってる。
一度絶交すれば、本当の理由が分かっても、謝れたりはしない。
教室は、ちょうどいじめの空白状態だった。
何のきっかけでも、良いのだ。
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