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ヒトコワ

プーくんさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

隔離された部屋
短編 2026/07/18 07:57 78view

大学2年の夏、僕は家賃が異様に安いアパートに引っ越した。
東京の郊外、築30年、木造2階建て。
家賃は相場の半額、月2万5千円だった。
不動産屋は「少し古いだけ」と言っていたが初日からおかしな点に気づいた。

僕の部屋は202号室。
隣の203号室のドアには、何故かびっしりとガムテープが貼られていた。
ただの空き部屋にしては、異様なほどの警戒ぶりだった。
大家さんに聞いても、「あそこだけは開けないでね」とだけ言って、直ぐに目を逸らした。

最初の1週間は、何事もなく過ぎた。
しかし、うだるような暑さが続く8月の夜、それは始まった。

深夜2時、壁の向こうから音が聞こえる。

「カリ……カリカリ……」

爪で柱をひっかくような乾いた音だった。
203号室は、空室のようだ。ネズミだろうか、と僕は思った。

しかし、次の夜、音は変わった。

「トントン……トントン……」

明らかに、規則正しく壁を叩いている。
そして、その音が少しずつ僕のベットの頭がある位置へと近づいてくる。
壁を隔てて、わずか数10センチの場所に「誰か」がいる気配がした。

「おい、静かにしろ!」

僕は思わず壁を拳で叩いた。
すると、ピタリと音が止まった。
静寂が部屋を包み、自分の心臓の音だけが響く。

安心した瞬間、壁の向こうから、信じられないものが聞こえた。

「ごめん、なさい……」

それは、かすれた女の声だった。
あまりに生々しいひびきに、全身の毛穴が逆立つのがわかった。
僕は布団を頭から被り、朝がくるのを待った。

翌日、大学の友人にこのことを話すと、彼は面白がって「スマホの録音アプリを仕掛けておけ」といった。
恐怖よりも好奇心がかった僕は、夜、寝る前にスマホの録音ボタンを押し、枕元において眠りについた。

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